膝が痛いのにレントゲンでは「異常なし」|MRIで分かること・分からないこと

原因

「こんなに膝が痛いのに、レントゲンでは異常がないと言われました」

「異常がないなら、この痛みは気のせいなのでしょうか?」

「MRIを撮った方がいいのでしょうか?」

診察室でも、こうした相談を受けることがあります。

こんにちは。
阿部整形外科クリニック院長、阿部です。

最初に結論をお伝えします。

「レントゲンで異常なし」=「膝に痛みの原因がない」という意味ではありません。

レントゲンは膝を診断するうえで非常に重要な検査ですが、膝を構成しているすべての組織がレントゲンで見えるわけではありません。

一方で、

「レントゲンで分からないなら、すぐMRIを撮ればいい」

というわけでもありません。

MRIはとても優れた検査ですが、画像で異常が見つかったとしても、それが必ず現在の痛みの原因とは限らないからです。

今回は、

  • レントゲンで分かること・分からないこと
  • MRIでは何が分かるのか
  • レントゲンが正常でも考えたい病気
  • どんな人にMRIを検討するのか
  • MRIで異常が見つかった後、どう治療を考えるのか

について、できるだけ分かりやすく解説します。

まず知ってほしい|レントゲンは「意味のない検査」ではありません

「MRIの方が詳しく分かるなら、最初からMRIを撮ればいいのでは?」

と思われるかもしれません。

でも、僕たち整形外科医にとってレントゲンは、膝を診断するための非常に重要な検査です。

レントゲンでは主に、

  • 骨折の有無
  • 関節の隙間
  • 骨棘
  • 骨の変形
  • 変形性膝関節症の進行度
  • 膝全体の骨配列

などを確認します。

特に変形性膝関節症では、立った状態で撮影したレントゲンから得られる情報は非常に重要です。

つまり、

レントゲンとMRIは、どちらが優れているという関係ではなく、見ているものが違う検査です。

では、レントゲンでは何が見えにくいのでしょうか?

膝には骨以外にもさまざまな組織があります。

代表的なのが、

  • 半月板
  • 関節軟骨
  • 前十字靱帯・後十字靱帯
  • 内側側副靱帯・外側側副靱帯
  • 腱
  • 滑膜
  • 骨髄

です。

これらの評価にはMRIが役立つ場合があります。

MRIで分かること① 半月板の状態

半月板は、大腿骨と脛骨の間にあるクッションのような組織です。

スポーツで膝をひねった場合だけでなく、中高年では加齢変化に伴って半月板に変性や断裂が生じることもあります。

症状としては、

  • 膝の内側や外側が痛む
  • しゃがむと痛む
  • 膝をひねると痛む
  • 引っかかる感じがする
  • 膝が伸びにくい

などがあります。

レントゲンでは半月板そのものは直接評価しにくいため、症状や診察所見から半月板損傷が疑われる場合には、MRIが役立つことがあります。

ただし「MRIで半月板損傷=痛みの原因」とは限りません

ここは非常に大切なので、ぜひ覚えておいてください。

中高年になると、膝が痛くない方でもMRIを撮ると半月板の変性や断裂が見つかることがあります。

つまり、

「MRIで異常が見つかった」ことと、「それが今の痛みの原因である」ことは同じではありません。

僕たちはMRIだけを見て診断するのではなく、

どこが痛いのか、どんな動作で痛いのか、診察するとどこに反応があるのか

を合わせて判断します。

これはとても重要です。

MRIで分かること② 関節軟骨の状態

変形性膝関節症では、関節軟骨が傷んでいきます。

レントゲンでは軟骨そのものが直接写るわけではなく、骨と骨との間隔などから間接的に状態を評価します。

MRIでは、軟骨の状態をより詳しく評価できる場合があります。

また、膝のお皿の裏側にある膝蓋大腿関節の軟骨病変などが症状に関係しているケースもあります。

たとえば、

  • 階段の上り下りで痛む
  • 長く座ったあと立つと痛い
  • 膝の前側が痛い

という症状では、膝蓋大腿関節を含めて評価することがあります。

MRIで分かること③ 骨の内部の異常

これは、今回の記事で特にお伝えしたいポイントです。

レントゲンは骨を見る検査ですが、 骨の内部で起きている初期の変化 まですべて分かるわけではありません。

代表的な病態の一つが、 膝軟骨下脆弱性骨折(SIFK) です。

特に50代以降の患者さんで、

  • 転んでいない
  • 急に膝の内側が痛くなった
  • 体重をかけると強く痛む
  • 夜も痛む

といった場合には注意が必要です。

初期にはレントゲンで明らかな異常が分かりにくいことがあります。

そのような場合、MRIで骨髄の変化や軟骨下の病変を確認することで診断につながることがあります。

MRIで分かること④ 靱帯や腱の損傷

膝には、

  • 前十字靱帯
  • 後十字靱帯
  • 内側側副靱帯
  • 外側側副靱帯

などがあります。

スポーツや転倒などでこれらを傷めると、

  • 膝がぐらつく
  • 方向転換が怖い
  • 膝が抜ける感じがする
  • 特定の方向に動かすと痛む

といった症状が出ることがあります。

診察だけである程度判断できることもありますが、損傷の程度やほかの組織の状態を調べるためにMRIを行う場合があります。

MRIで分かること⑤ 滑膜炎・関節液・そのほかの病変

膝の中には滑膜という組織があります。

炎症が起きると関節液が増え、いわゆる 「膝に水がたまる」 状態になることがあります。

MRIでは関節液や滑膜の状態、そのほかの関節内病変について情報が得られる場合があります。

ただし、膝に水がたまっているからといってMRIが必ず必要なわけではありません。

重要なのは、

「なぜ水がたまったのか」

を症状・診察・必要な検査から考えることです。

では、どんなときにMRIを考えるのでしょうか?

僕は、 「膝が痛いから、とりあえずMRIを撮りましょう」 という考え方はしていません。

まず問診をして、実際に膝を診察し、必要に応じてレントゲンを撮ります。

そのうえで、

  • 痛みが強いのにレントゲンでは説明できない
  • 突然強く痛くなり、体重をかけにくい
  • 半月板や靱帯損傷が疑われる
  • 膝が引っかかって動かしにくい
  • 適切な保存療法を続けても原因不明の痛みが続く
  • 診断によって治療方針が大きく変わる可能性がある

といった場合にMRIを検討します。

MRIを撮ること自体が目的ではありません。
MRIによって治療方針が変わる可能性があるのか。それが重要です。

逆に、MRIを急いで撮らなくてもよい場合もあります

たとえば典型的な変形性膝関節症で、診察とレントゲン所見が症状と一致している場合です。

このようなケースでは、MRIを撮らなくても、

  • 生活動作の見直し
  • 運動療法
  • リハビリテーション
  • 薬物療法
  • ヒアルロン酸注射など

から治療を開始できる場合があります。

「MRIを撮っていないから診断が不十分」

というわけではありません。

必要な検査を、必要な患者さんに行うことが大切です。

MRIに異常が見つかったら、すぐ手術なのでしょうか?

これもよく聞かれる質問です。

答えは、

「MRIで異常が見つかった=すぐ手術」ではありません。

たとえば中高年の半月板の変性や断裂は、症状がない方にもみられることがあります。

そのため、

「MRIで半月板が切れています。だから手術です」

と画像だけで治療を決めるのではなく、

  • 本当にそこが痛みの原因なのか
  • 日常生活にどのくらい困っているのか
  • ロッキングなどの機械的症状があるのか
  • リハビリで改善できる余地があるのか
  • 患者さんは何ができるようになりたいのか

を確認して治療方針を考えます。

PRPを考える前にも「診断」が大切です

当院では変形性膝関節症などに対するPRP療法を行っています。

ただし、

「レントゲンで異常なしだったからPRPをしましょう」

という考え方はしていません。

まずは痛みの原因を考えます。

原因によっては、

  • 負荷を減らすことが必要
  • リハビリテーションが中心になる
  • 別の治療が必要
  • 場合によっては手術を検討した方がよい

こともあります。

一方で、変形性膝関節症などで保存療法を続けても十分な改善が得られず、症状や病態が合えば、PRPを治療選択肢の一つとして検討する場合があります。

僕が大切にしている順番は、

① 痛みの原因を考える
↓
② 治療の選択肢を整理する
↓
③ 患者さんが何を取り戻したいのか確認する
↓
④ その人に合った治療を選ぶ

です。

もし自分の家族が「レントゲンでは異常なし」と言われたら

もし自分の家族が、

「膝がかなり痛いのに、レントゲンでは何ともないと言われた」

と相談してきたら、僕ならこう考えます。

まず、

「レントゲンが正常だったこと」ではなく、「今どんな痛みなのか」をもう一度確認します。

どこが痛いのか。

急に始まったのか。

階段で痛いのか。

体重をかけると痛いのか。

夜も痛いのか。

引っかかるのか。

診察してレントゲンで説明できれば、MRIを急いで撮らないこともあります。

でも、症状が強いのにレントゲン所見と合わない場合には、

「レントゲンが正常だから大丈夫」

で終わらせず、MRIを含めてもう少し調べる必要がないかを考えます。

自分の家族を診るとしても、僕は同じように考えます。

大切なのは「画像を治すこと」ではありません

MRIを撮ると、いろいろなことが分かります。

でも、治療の目的は、

MRIをきれいにすることではありません。

患者さんが本当に取り戻したいのは、

「痛みを気にせず買い物へ行きたい」

「孫と出かけたい」

「旅行へ行きたい」

「もう一度ゴルフをしたい」

という生活ではないでしょうか。

だからこそ僕は、

「画像に何が写ったか」だけではなく、「あなたは何ができるようになりたいですか?」

ということも大切にしたいと思っています。

まとめ|「異常なし」と言われても、痛みまで否定されたわけではありません

レントゲンで「異常なし」と言われると、

「それなら、どうしてこんなに痛いの?」

と不安になりますよね。

でも、

レントゲンで異常が見えないことと、痛みの原因がないことは同じではありません。

半月板、軟骨、靱帯、骨の内部など、必要に応じてMRIで評価できる組織があります。

その一方で、MRIで見つかった異常がすべて痛みの原因というわけでもありません。

だからこそ、

問診 → 診察 → レントゲン → 必要ならMRI

という順番で考えることが大切です。

「レントゲンでは問題ないと言われたけれど、まだ膝が痛い」

そんなときは、我慢し続けるのではなく、一度もう一度膝の状態を整理してみてもよいと思います。

「レントゲンでは異常なし」と言われた膝痛でお困りの方へ

阿部整形外科クリニックでは、まず症状と診察所見を確認し、レントゲンなどの画像と照らし合わせながら膝痛の原因を考えます。

必要に応じて追加検査を検討し、

保存療法・リハビリテーション・注射治療・再生医療、そして必要な場合には手術を含めて治療選択肢を整理します。

最初から治療法を決める必要はありません。

まず、 「なぜ痛いのか」 を一緒に考えるところから始めましょう。

▶ 阿部整形外科クリニックの診療について

▶ 膝関節のPRP・再生医療について詳しく見る

よくある質問

Q1.レントゲンで異常なしでも、膝に病気があることはありますか?

あります。レントゲンは非常に重要な検査ですが、半月板、靱帯、関節軟骨、骨髄の変化などは十分に評価できない場合があります。症状や診察所見によってはMRIなどを検討します。

Q2.膝が痛ければMRIを撮った方がいいですか?

すべての膝痛にMRIが必要なわけではありません。診察やレントゲンで原因がある程度判断でき、治療方針が決められる場合も多くあります。MRIによって診断や治療方針が変わる可能性がある場合に検討します。

Q3.MRIで半月板損傷が見つかったら手術が必要ですか?

必ずしも必要ではありません。中高年では症状がない方にも半月板の変性や断裂がみられることがあります。症状、診察所見、画像を総合して治療方針を決めます。

Q4.レントゲンが正常でも骨折していることがありますか?

病態によってはあります。膝軟骨下脆弱性骨折などでは、発症初期のレントゲンで明らかな異常が見えにくい場合があります。中高年で外傷がないのに急に強い荷重時痛が出た場合などは、必要に応じてMRIを検討します。

Q5.レントゲンが正常でもPRPはできますか?

レントゲンが正常かどうかだけでPRPの適応を決めることはできません。痛みの原因、診断、症状の程度、これまで行ってきた保存療法などを確認したうえで、PRPが治療選択肢となるかを判断します。


この記事の監修

阿部整形外科クリニック
院長 阿部 瑞洋

整形外科診療、運動器リハビリテーション、膝・股関節疾患、再生医療などに取り組んでいます。

「自分や家族ならどうするか」という視点を大切にし、必要な手術は適切に提案しながら、手術以外の選択肢がある患者さんには保存療法、リハビリテーション、再生医療など複数の選択肢を提示しています。

治療そのものではなく、 「何ができるようになりたいのか」 を患者さんと共有しながら治療方針を考えることを大切にしています。

※本記事は一般的な医学情報を提供するもので、個別の診断・治療を代替するものではありません。症状が強い場合や急激に悪化した場合には医療機関を受診してください。

この記事を執筆した人

阿部整形外科クリニック 阿部院長

阿部 瑞洋 医師

  • 整形外科専門医
  • 膝・股関節専門医

一般社団法人エンジョイワーク 阿部整形外科クリニック 院長。
膝関節・股関節の保存療法および再生医療(HD-PRP)を中心に治療を行ない、年間延べ3万人以上の患者様の診療実績を持つ。「普通ではないクリニック」を理念に、最新医療とおもてなしの医療を両立。

阿部整形外科クリニック公式YouTubeチャンネル

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