こうした患者さんは、実は少なくありません。
こんにちは。
阿部整形外科クリニック院長、阿部です。
膝の治療を考えるとき、僕たちはどうしても、
「どの治療が一番効くのか」
ということばかり考えがちです。
でも、患者さんにとって大切なのは、効果だけではありません。
仕事、家族、旅行、趣味。
そして、
「治療のために、どのくらい時間を使えるのか」
ということも、治療選択ではとても重要だと僕は考えています。
阿部整形外科クリニックでは、膝の治療選択肢の一つとして、歯髄由来の幹細胞培養上清液を関節内に投与する自由診療を導入予定です。
当院では膝関節に1回15mLを使用する方針です。
PRPとは治療までの流れが異なり、当院の運用では患者さんご本人の採血や事前の感染症検査を必要としないため、医師が診察して適応を確認し、問題がなければ当日の治療を検討できる点が大きな特徴です。
ただし、最初にとても大切なことをお伝えしておきます。
幹細胞培養上清液は、現在のところ、変形性膝関節症に対する標準治療として有効性・安全性が確立された治療ではありません。
「軟骨が必ず再生する」「一度で治る」という治療ではありません。
今回は、そのメリットだけではなく、限界やPRPとの違いまで含めてお話しします。
そもそも「幹細胞培養上清液」とは?
名前が少し難しいですよね。
まず誤解してほしくないのは、
幹細胞培養上清液は、「幹細胞そのもの」を膝に入れる治療ではありません。
幹細胞を培養すると、培養液の中には細胞から分泌されたさまざまな物質が含まれます。
その細胞を取り除いたあとの液体部分が、一般に「幹細胞培養上清液」と呼ばれています。
研究では、その中にサイトカインや成長因子、細胞外小胞などが含まれる可能性があり、炎症や組織環境にどのような影響を与えるか研究されています。
ただし、その内容は製品の製造方法や由来によって一定ではなく、臨床的な効果についても、まだ十分に確立されているとは言えません。
当院では「歯髄由来」を使用します
幹細胞培養上清液には、
- 脂肪由来
- 臍帯由来
- 歯髄由来
など、いくつかの由来があります。
阿部整形外科クリニックでは、
歯髄由来の幹細胞培養上清液
を使用する予定です。
ここで、
「歯髄由来だから、脂肪由来より必ず効果が高いのでしょうか?」
と質問されるかもしれません。
現時点では、膝関節症に対して
「歯髄由来が他の由来より明確に優れている」
と断定できる十分な臨床データがあるわけではありません。
そのため当院でも、由来だけで効果を強調するのではなく、製品の品質管理、安全性に関する情報、患者さんの状態などを確認しながら使用します。
当院では膝関節に1回15mLを使用します
当院では、膝関節に対して
1回15mL
の幹細胞培養上清液を関節内に投与する方針です。
ただし、ここも重要です。
15mLという量が、医学的に確立された「唯一の最適量」という意味ではありません。
幹細胞培養上清液は製剤や製造方法が統一されておらず、膝関節に対する標準的な投与量も確立されていません。
当院では、使用する製品の仕様などを踏まえて15mLを1回投与する治療設計としています。
この治療の一番の特徴は「時間」です
僕がこの治療を導入したいと思った理由の一つが、
「時間を大切にしたい患者さんに、別の選択肢を用意できる」
ということです。
たとえば、
- 経営者で何度も仕事を休みにくい
- 遠方から通院している
- 家族の介護があり、自分の通院時間を作りにくい
- 仕事の予定が詰まっている
- 治療を始めるまでの日数をできるだけ短くしたい
という方です。
治療を選ぶ基準は、
価格だけではありません。
時間もまた、とても大切な価値です。
診察したその日に治療できる場合があります
当院で予定している流れはシンプルです。
- 医師による診察
- レントゲンなどで膝の状態を確認
- 治療内容・期待できること・限界・リスク・費用を説明
- 適応があり、ご本人が希望された場合に治療
当院のPRP治療では、患者さんご自身の血液を採取する治療であるため、当院の運用上、感染症検査などを行い、結果を確認してから治療日を設定しています。
一方、幹細胞培養上清液は患者さん自身の血液から作製するものではありません。
そのため、当院ではPRPで行っているような患者さん本人の事前採血・感染症検査を治療前提としていません。
診察の結果、適応があり、治療に必要な条件が整っていれば、
初診当日に治療まで進めることも可能です。
もちろん、
「来院したら必ずその日に注射する」
という意味ではありません。
まず診断が最優先です。
感染症が疑われる場合や、他の治療を優先すべき病態がある場合には、治療を行わないことがあります。

PRPと何が違うのでしょうか?
当院では、すでにPRP治療を行っています。
ですから患者さんから、
「PRPと幹細胞培養上清液は、どちらがいいのですか?」
という質問が出ると思います。
僕は、
「どちらが上、どちらが下」という関係ではない
と考えています。
| 項目 | PRP | 幹細胞培養上清液 |
|---|---|---|
| 原料 | 患者さん自身の血液 | 当院では歯髄由来の培養上清液 |
| 採血 | 必要 | 患者さん本人の採血は不要 |
| 当院での事前検査 | 感染症検査を実施 | PRPと同じ事前検査は原則不要 |
| 治療までの時間 | 検査結果確認後に施行 | 適応確認後、当日施行できる場合あり |
| エビデンス | 膝OAに対する臨床研究が比較的多い | 膝に対する臨床エビデンスはまだ限定的 |
ここが、僕が患者さんに説明したい一番大切な違いです。
PRPは「自分の血液を利用する」という特徴があります。
一方、
幹細胞培養上清液には「治療までの時間を短縮しやすい」という特徴があります。
僕なら、こんな方に相談の選択肢として提示します
たとえば、
- 仕事が忙しく、何度も通院することが難しい
- できるだけ早く治療を開始したい
- 手術以外の治療選択肢を知りたい
- 保存療法を行っても痛みが続いている
- PRPも含めて自由診療の選択肢を比較したい
という方です。
反対に、
「膝が痛い人なら誰にでも勧める治療」
ではありません。
変形性膝関節症なのか。
半月板なのか。
骨折なのか。
感染なのか。
それとも手術を考えるべき段階なのか。
まず診断が必要です。
どのくらい効果があるのでしょうか?
これは患者さんが最も知りたいところだと思います。
しかし僕は、
「何%の人に効く」
あるいは、
「軟骨が再生する」
といった断定的な説明はしません。
幹細胞培養上清液や、その中に含まれる可能性がある細胞外小胞などについては研究が進んでいますが、製品・製造方法・投与量などが一定しておらず、膝関節症に対する臨床的有効性についてはまだ十分なエビデンスが確立されていません。
したがって、
「標準治療の代わりになる治療」ではなく、限界を理解したうえで検討する自由診療の選択肢の一つ
として考えるのが適切だと思います。
安全性についても「絶対安全」とは言えません
患者さんご自身の細胞を移植する治療ではありませんが、
だからといって、
「副作用がない」
という意味ではありません。
関節内注射そのものには、
- 注射部位の痛み
- 腫れ
- 感染
- 一時的な症状増悪
などのリスクがあります。
また、幹細胞培養上清液は製品ごとに製造工程や品質管理が異なります。
そのため当院では、製品の品質管理に関する情報を確認し、治療前にリスクも含めて説明することを大切にします。
「時間を買う」という治療の考え方
僕はこの治療を、
「PRPより優れた治療」
として導入したいわけではありません。
PRPが合う患者さんもいます。
リハビリだけで改善する患者さんもいます。
手術を受けた方がよい患者さんもいます。
そして、
「お金よりも、自分の時間を大切にしたい」
という患者さんもいます。
僕が用意したいのは、
患者さんの価値観に合わせて選べる選択肢
です。

もし自分の家族から相談されたら
もし自分の家族が、
「膝が痛い。でも仕事が忙しくて、何度も病院へ行く時間がない」
と言ったら、僕ならまず、
治療を決める前に診断をします。
そのうえで、
「リハビリで十分なのか」
「PRPがいいのか」
「幹細胞培養上清液という選択肢も考えられるのか」
「手術を検討した方がいいのか」
を一緒に整理します。
そして最後は、
何を優先したいのか
を本人に聞きます。
治療効果。
費用。
通院回数。
時間。
治療を始めるまでの日数。
すべて大切です。
人によって答えは違います。
治療そのものがゴールではありません
僕たちが目指しているのは、
「PRPをすること」
でも、
「幹細胞培養上清液を注射すること」
でもありません。
患者さんが、
旅行に行く。
仕事を続ける。
ゴルフをする。
孫と歩く。
そうした生活を取り戻すために、治療があります。
「あなたは何ができるようになりたいですか?」
そこから治療を一緒に考えたいと思っています。
まとめ|忙しいからと、膝の治療を諦めなくてもいい
- 幹細胞培養上清液は、幹細胞そのものを注射する治療ではありません
- 当院では歯髄由来の幹細胞培養上清液を使用予定です
- 膝関節には当院の治療設計として1回15mLを使用します
- 患者さん本人の採血は必要ありません
- 当院ではPRPのような事前感染症検査を治療前提としていません
- 診察で適応を確認できれば、当日治療できる場合があります
- PRPと比較して「時間を優先しやすい」という特徴があります
- 一方で、膝関節症に対する有効性・安全性はまだ十分確立された治療ではありません
忙しいから治療できない。
それだけで膝を我慢し続ける必要はありません。
まずは、
「自分の膝には、どの選択肢が合っているのか」
から一緒に考えてみましょう。

膝の治療に「時間」も重視したい方へ
阿部整形外科クリニックでは、まず膝の状態を診断し、保存療法、リハビリテーション、PRP、歯髄由来幹細胞培養上清液、必要な場合には手術まで、患者さんの状態と希望に合わせて選択肢をご説明します。
「仕事を何度も休めない」
「できるだけ早く治療を始めたい」
「PRPと違う治療も知りたい」
という方もご相談ください。
よくある質問
Q1.幹細胞そのものを膝に注射するのですか?
いいえ。当院で使用予定のものは歯髄由来の「幹細胞培養上清液」であり、幹細胞そのものを移植する治療ではありません。
Q2.膝には何mL注射しますか?
当院では膝関節に1回15mLを使用する予定です。ただし、15mLが医学的に唯一の最適量として確立されているという意味ではなく、当院で採用する製品と治療設計に基づく使用量です。
Q3.初診当日に治療できますか?
診察で治療適応を確認し、他の治療を優先すべき問題がなく、必要な説明と同意が得られた場合には、当日に治療できることがあります。
Q4.PRPとどちらが効果がありますか?
現時点では、当院で使用予定の歯髄由来幹細胞培養上清液がPRPより優れていると断定できる十分な臨床エビデンスはありません。PRPには自己血を使用する特徴があり、幹細胞培養上清液には患者さん本人の採血が不要で、当院では治療までの時間を短縮しやすいという特徴があります。
Q5.軟骨は再生しますか?
現時点では、この治療によって失われた膝軟骨が必ず元通りに再生すると断定することはできません。そのような説明は行わず、期待できる可能性と限界を説明したうえで治療を検討します。
Q6.保険は使えますか?
自由診療となる予定です。費用については、正式導入時に院内およびホームページでご案内します。
この記事の監修
阿部整形外科クリニック
院長 阿部 瑞洋
整形外科診療、運動器リハビリテーション、膝・股関節疾患、PRPを含む自由診療などに取り組んでいます。
「自分や家族ならどうするか」という視点を大切にし、必要な手術は適切に提案しながら、手術以外の選択肢がある患者さんには複数の治療方法を提示しています。
治療そのものではなく、
「何ができるようになりたいのか」
を患者さんと共有しながら治療方針を考えることを大切にしています。
重要なお知らせ:
幹細胞培養上清液およびその中に含まれる可能性のある細胞外小胞等については、現時点で有効性・安全性が確立され薬事承認された医薬品として製造販売されているものではありません。当院では、治療の限界・リスク・代替治療について説明したうえで、自由診療として実施を検討します。
※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。


