「最近、股関節に違和感がある」「でも手術は避けたい」――そんな声を外来で多く聞きます。
そこで注目されているのが再生医療です。自分の血液や組織を活用し、炎症を抑え修復を促す最先端の治療法で、手術以外の選択肢を求める方に適しています。

再生医療とは?
再生医療は、体が本来持っている修復力を利用する治療法です。股関節分野では、自分の血液から成分を抽出し注射することで炎症を抑え、組織修復を促進します。
メリットは体への負担が少ない・副作用が少ない・生活を続けながら治療できる点です。
股関節で用いられる代表的な再生医療
PRP療法(多血小板血漿)
自分の血液から血小板を濃縮し注射。血小板に含まれる成長因子が炎症を抑え、組織の修復を促します。
スポーツ選手の治療として有名で、股関節の初期症状にも応用されています。
APS療法(自己蛋白溶液)
PRPをさらに加工し、炎症を抑える成分を高濃度に抽出した治療法。
特に変形性股関節症の中期〜末期に有効とされ、強い炎症や痛みに対して効果が期待できます。
治療の流れ
- 採血を行う
- 専用機器で血液を加工しPRPまたはAPSを抽出
- 股関節に注射
- その後は通常通り生活可能(安静期間はほとんど不要)
効果と持続期間
効果の実感には個人差がありますが、多くの方が数週間〜数か月で痛みの軽減を感じます。
持続期間は半年〜1年以上に及ぶ場合もあり、必要に応じて繰り返し行うことが可能です。
安全性と副作用
自分の血液を利用するためアレルギーや拒絶反応のリスクはほとんどありません。
注射部位の腫れや熱感が一時的に出ることがありますが、多くは数日で落ち着きます。
どんな人に向いている?
- 手術を避けたい方
- 股関節の痛みが続くが、初期〜中期の段階にある方
- 保存療法で効果が不十分な方
- 仕事や趣味を続けながら治療したい方
患者さんの声
50代男性・会社員
「股関節の痛みで趣味のゴルフを諦めかけましたが、PRP療法を受けてから痛みが軽減し、再びプレーできるようになりました。」
60代女性・主婦
「人工関節の手術は避けたいと思っていたので、PRP療法を選びました。注射後2か月で階段の上り下りが楽になりました。」
再生医療の限界
再生医療は万能ではありません。変形が進行してしまった股関節では効果が限定的で、最終的に人工股関節手術が必要になる場合もあります。
そのため早期の受診と治療開始が大切です。
まとめ
中年太りによる股関節の負担で痛みや違和感がある場合、再生医療は手術以外の有力な選択肢です。
PRP療法・APS療法は炎症を抑え、組織の修復を促進し、生活の質を向上させる可能性があります。
ただし進行例では効果が限られるため、早めに専門医に相談しましょう。
股関節を守るには「食事」と「運動」も欠かせません。
ぜひ食事編と運動編も併せてご覧ください。
監修医師
阿部 瑞洋 医師
東京都三鷹市 阿部整形外科クリニック 院長
日本整形外科学会専門医/股関節外科・再生医療を専門とする。