股が痛いときは、「股関節(こかんせつ)」に異常を来している可能性があります。

 股関節は両脚の付け根部分に位置していますが、体の奥にあるので手で触れることはできません。また、体中で一番大きな関節である股関節は、構造上とても負荷のかかる関節なので片足で立っているだけでも体重の約3~4倍もの負荷がかかり、早足では約10倍の負荷がかかるとされています。

 股関節は、大腿骨(だいたいこつ=太ももの骨)の上端にある球状の「骨頭(こっとう)」と、通常骨頭の約4/5を包み込む受け皿のような形をしている「寛骨臼(かんこつきゅう)」または「臼蓋(きゅうがい)」から構成されている球関節*1です。

*1球関節:ボールと受け皿のような関係をする関節のこと。股関節のほか、肩と腕の付け根の関節も球関節であり、自由度の高い関節。

さらに、骨頭と寛骨臼の接する面には軟骨があり、股関節の周りには様々な筋肉・腱が付いているので股関節の安定を保ちながら、足を前後左右と自由に動かすことができるのです。

(図)股関節の構成

 股関節の異常によって関節の変形や可動域に制限が起こると、起立・歩行など日常生活への影響も大きいものとなります。股(足の付け根)に痛みを感じたときは速やかに整形外科を受診しましょう。

 当院では、股(足の付け根)の痛みに対して、問診・視診・触診のほか、超音波検査(エコー)による画像検査で診断しています。

 超音波検査は、レントゲン検査では見つけられないような筋肉やじん帯・腱などの微細な損傷を見極めることが可能であり、患者さんも一緒に病変部位を見ながら確認できます。さらに、検査は痛み無く受けられ、被爆の心配もありません。

 なお、必要に応じて、X線検査(レントゲン)、MRI検査、CT検査なども行います。

 股関節に痛みや違和感がある方、歩き始め・歩いた後などに股関節に痛みがある方など、お気軽に当院までご相談ください。

変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)

 変形性股関節症は、股関節の骨・軟骨がすり減り、変形することによって股関節に痛みや可動域制限(関節が動かしづらいこと)が現れる病気で、中高年の女性に多くみられます。  

 関節は変形すると、基本的に二度と戻らないので早期発見・早期治療が大切です。

 変形性股関節症は明らかな原因がなく加齢・体重増加・スポーツなどが要因となる「一次性」と、原因となる病気が明らかな「二次性」があり、以前の日本では二次性が大半を占めていましたが、最近は一次性が増加しています。原因となる病気の約80%は生まれつき股関節が脱臼している状態の「先天性股関節脱臼」や生まれつき寛骨臼(臼蓋:きゅうがい)の被りが浅い「臼蓋形成不全」です。骨頭を受ける臼蓋の面積が狭いと、股関節に集中して負荷がかかって早く軟骨が摩耗してしまうため、変形性股関節症を発症しやすくなります。

(画像引用)股関節のX線写真|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/hip_osteoarthritis.html

 変形性股関節症は4つの進行段階に分かれています。

  1. 超初期(前期関節症)
     股関節形成に異常がみられていても、まだ関節軟骨が保たれているため、痛みなどの自覚症状はありません
  2. 初期
     初期では関節軟骨がすり減り始め、関節の隙間が狭くなったり、軟骨の下の骨が固くなったり(骨硬化)します。歩き始め・立ち上がりの際に足の付け根や太もも・お尻に痛みを感じるようになります。なお、股関節の神経が膝にも分布しているため、膝に痛みが現れることもあります。
  3. 進行期
     関節軟骨のすり減りが進み、骨の隙間が明らかに狭くなります。股関節の骨硬化した部分に穴が開く「骨嚢胞(ほねのうほう)」ができたり、骨の出っ張りができる「骨棘(こつきょく)」ができたりしてきます。痛みが強くなるため、長時間歩行や立っていることがつらくなり、足を引きずりながら歩くといった跛行(はこう)がみられます。関節の可動域が狭くなることで、しゃがんだり、爪を切ったりすることも難しくなります。
  4. 末期
     関節のすり減りが広範囲に広がり、寛骨臼と骨頭の隙間が完全になくなった状態です。骨頭が潰れることで常に強い痛みを感じて、夜寝ていても痛い状態となります。

(画像引用)変形性膝関節症の関節イメージ図|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/hip_osteoarthritis.html

 変形性股関節症は自覚症状などの問診、視診・触診による股関節の可動域制限の確認、X線検査(レントゲン)・超音波検査などの画像診断を行い診断します。必要に応じて、MRI検査、CT検査なども行います。

 変形性股関節症の治療では、症状を和らげる対症療法と変形の進行を抑える保存的治療が基本となります。同時にできるだけ股関節への負担をかけないように生活することが大切です。肥満があれば減量する、杖を突くなどの「生活指導」や股関節の周囲の筋肉を強化するストレッチなどの「運動療法」、痛みが強い時には「薬物療法」を行います。

 保存的治療で症状が改善しないときには、手術を検討します。手術にはご自身の骨を生かして関節の適合性を改善する「骨切術」と股関節の一部を人工物に置き換える「人工股関節置換術」があります。手術は患者さんの年齢や変形具合、社会活動性、ご希望などによって選択します。

※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。

発育性股関節形成不全(はついくせいこかんせつけいせいふぜん)

 発育性股関節形成不全は、股関節が外れたり(脱臼)外れかかったりする(亜脱臼)病気です。以前は「先天性股関節脱臼」と呼ばれていましたが、脱臼は出生後に発生すると分かったため名称が変更されました。

 現在は乳児検診(1か月検診・3~4か月検診)によりスクリーニング(ふるい分け)が行われているため早期発見が可能となっています。さらに検診では脱臼予防の啓もう活動も行われているので、発生率は1,000人に約1~3人と、まれな病気となっています。とはいえ、発育性股関節形成不全の後遺症は、二次性変形性股関節症の原因となるため、できるだけ早期(1歳くらいまで)に治療したい病気です。

 発育性股関節形成不全は、女児、逆子(骨盤位)で出生、家族に股関節が悪い人がいる、寒い時期(11月~3月)や寒い地域で生まれるなど脱臼しやすい素因(内的要因)を持った赤ちゃんに多くみられます。

 発症原因は内的要因を持っている赤ちゃんに外的要因が加わることです。股関節を伸ばすような抱き方や寝かせ方によって、脱臼すると考えられています。

(図)赤ちゃんの自然な姿勢「M字型開脚」
※横抱きスリングでは開脚姿勢が取れず、両足が伸ばされる危険があります。

 発育性股関節形成不全は外傷性の脱臼とは異なり、脱臼していても痛みはありませんが、脱臼している側の股関節の開きが悪い、太もも(大腿)・お尻の皮膚のしわが左右非対称、左右の足の長さが違うなどがみられます。なお、歩き始め以降では足を引きずって歩く跛行がみられます。

 発育性股関節形成不全の検査では画像診断を行います。新生児期では超音波(エコー)検査、乳児期(3~6か月)では超音波検査を行い、股関節異常が疑われる場合に追加でX線検査を行うことがあります。歩き始めた後(1歳以降)では、症状などの臨床所見とX線検査から診断します。

 治療は治療開始時期によって異なります。生後1か月くらいまでは自然治癒することもあります。乳児期(生後3~6か月頃)に治療開始を開始したときには、「リーメンビューゲル」と呼ばれるベルト型の装具による脱臼の整復(ずれた部分を正しい位置に戻すこと)を行います。この装具により約80%が整復可能です。ただし、長期装着は骨頭障害の合併症(ペルテス病)の危険があるため、装着2週間後に効果測定を行います。装具整復で改善しないときや幼児期以降(1歳頃)に治療開始となるときには入院して牽引する「オーバーヘッド・トラクション法」を行います。牽引でも改善しない場合には、観血的整復として整復を邪魔しているものを除去する手術が必要となります。

 発育的股関節形成不全は整復=治療終了ではありません。整復された後も定期的に経過観察を行い、成長過程で亜脱臼などがみられた際には将来の変形性股関節症への進展を予防するため、速やかに「骨切術」などの補正手術を検討します。

※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。

大腿骨寛骨臼インピンジメント(だいたいこつかんこつきゅういんぴんじめんと)

 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)は、近年新しく認知された概念です。

 インピンジメントとは「衝突」のことで、骨同士がぶつかることによって痛みが現れる病気です。股関節以外に肩関節でもみられます。

 大腿骨寛骨臼インピンジメントは、寛骨臼や大腿骨頭に骨棘などの軽い骨形態異常がある状態で、股関節を深く曲げる動作を過度に繰り返してしていることによって発症します。寛骨臼と大腿骨が衝突(インピンジメント)することによって、関節唇*2の損傷や骨や軟骨の変形を起こすようになります。その結果、股関節に痛みが現れます関節軟骨まで損傷が進行すると、変形性股関節症の一因となることがあります。

*2関節唇:股関節の関節唇は、骨盤側の寛骨臼の縁にある繊維軟骨組織。ゴムパッキンのように大腿骨頭を包み込み、安定化・衝撃吸収の役割をしている。

(図)関節唇

 大腿骨寛骨臼インピンジメントは、損傷の発症原因によって3つのタイプに分類されます。30~40代女性に多く寛骨臼の被りが大きすぎることに起因する「ピンサータイプ」、20~30代男性に多く大腿骨頭頚部(太もも側骨頭から細くなる部分)が隆起することに起因する「キャムタイプ」、寛骨臼と大腿骨どちらにも病変が起こっている「ミックスタイプ」です。

 いずれの場合も股関節唇が損傷すると、靴下を履く姿勢、かがむ、胡坐をかく、椅子から立ち上がるなど股関節を深く曲げる動作で股関節に痛みや引っ掛かりを感じるようになります。また、「スポーツ障害」のひとつとして、サッカーやアイスホッケー、ハードル競技などを熱心に行っているときにも起こりやすい疾患です。

 診断には、股関節を深く曲げたり、内旋(ないせん:体の内側に向かって曲げる)したりする痛みの誘発テストおよびX線検査やCT・MRI検査などの画像診断によって股関節唇・軟骨の状態を確認します。

 主な治療法は、股関節周囲筋ストレッチや外転筋を中心とした筋トレなどのリハビリテーションと薬物療法(内服・関節内注射など)の「保存的治療」となります。痛みが強いときはスポーツを控えましょう。また、治療と並行して、日常生活において痛みを誘発する動作(股関節を深く曲げる動作など)への指導も行います。

(図)大腿骨寛骨臼インピンジメント リハビリ例

 保存的治療を3か月程度続けても改善しない場合には、外科的治療として関節鏡による股関節唇の縫合や骨形態異常の処置を行います。なお、関節鏡手術を行うことにより変形性股関節症の発症予防につながります。

※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。

特発性大腿骨頭壊死症(とくはつせいだいたいこつとうえししょう)

 特発性大腿骨頭壊死症は、はっきりとした原因はなく(=特発性)大腿骨頭の一部に血流障害が起こり壊死する*3ことによって、股関節機能が失われていく病気です。しかし、適切な治療を受ければ、痛みなく生活することも可能な病気でもあります。

 *3壊死:血液が流れず組織の一部が死ぬこと。全国疫学調査(2004年)によると、新規患者数は年間約2,200人*4と報告されており、国の「指定難病」にも登録される疾患であり医療費補助の対象となります。
https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/kenkyuhan_pdf2014/gaiyo063.pdf

 壊死が発生した段階では自覚症状はなく、数か月~数年と発生から少し時間が経ってから体重による負荷に耐え切れず、壊死した部分の骨頭が潰れてくると痛みが現れるという特徴があります。まれに股関節痛ではなく腰痛・膝の痛み・お尻の痛みとして現れることもあります

 また、痛みが出始めた発症初期では安静にしていれば2~3週間で落ち着くことがありますが、股関節への負荷が蓄積していくことで骨の潰れ(圧潰:あつかい)が進行し、痛みも強くなります。長期的には変形性膝関節症に進展することがあります。

(画像引用)骨頭壊死の進行イメージ|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/femur_head_necrosis.html

 特発性大腿骨頭壊死症の発症原因ははっきりしていませんが、男性ではお酒をよく飲む方(アルコールの多飲)、女性ではステロイド剤の服用が危険因子となっていることが分かっています。
特発性大腿骨頭壊死症はX線検査から診断します。ただし、発症早期においてはX線検査で変化がみられないので、疑いがあるときにはMRI検査を行います。他の部位の壊死も同時に確認したい場合には「骨シンチグラフィー」と呼ばれる検査を行うことがあります。

(画像引用)特発性大腿骨頭壊死症の検査方法|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/femur_head_necrosis.html

 発症早期や壊死範囲が狭いときには、杖を使用するなど股関節の負荷を減らして安静を図りつつ、痛み止めなどの薬物療法を併用した「保存的治療」を中心に治療を進めます。

 壊死範囲が広く変形が進行する可能性が高いときには、手術を検討します。手術にはご自身の骨を生かして関節の適合性を改善する「骨切術」と股関節の一部を人工物に置き換える「人工股関節置換術」があります。若い方では「骨切り術」が第一選択となりますが、基本的には患者さんの年齢や変形具合、社会活動性、ご希望などによって選択します。

※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。

大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)

 大腿骨頚部とは、足の付け根にある太ももの骨(大腿骨)のうち、骨盤とのつなぎ目にある丸い骨(骨頭)の下の細くなった部分のことです。大腿骨頚部骨折が起こると、股関節に痛みが現れます。高齢者で足の付け根の痛みが数日続いた後、急に立てなくなった場合にはこの病気が疑われます。

(画像引用)左大腿骨頚部骨折のX線検査画像|日本骨折治療学会
https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip25.html

 診療ガイドラインによると、大腿骨頚部骨折の年間発生数(2007年)は約15万件*5と報告されています。大腿骨頚部骨折は特に骨粗鬆症の高齢女性に多くみられ、この骨折をきっかけに寝たきりや閉じこもりとなることがあるため、超高齢化社会の現代において社会問題となっています
*5(参考)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0016/G0000307/0024

 大腿骨頚部骨折の主な原因は「転倒」ですが、折れた場所が関節の内側か外側かによって医学的には区別されており、骨折の原因となる転倒の程度や全身への影響も異なります。

 関節の内側が折れる「大腿骨頸部(内側)骨折」は、(特に骨粗鬆症の患者の方が)足をひねるなど些細なきっかけで発症することが多く、内出血は少ないという特徴があります。なお、内側骨折は合併症として、血流障害による骨頭壊死に注意が必要です。

 一方、関節の外側が折れる「大腿骨頸部外側(転子部)骨折」は、明らかな転倒や転落が原因で発症することが多く、内出血がみられるという特徴があります。

 大腿骨頚部骨折はX線検査で診断します。ただし、ひび(亀裂骨折)はX線検査では確認できないこともあるため、MRI検査を行うことがあります。

 高齢者の骨折では過度に安静にしてしまうことで、認知症や運動機能低下・うつ状態などの「廃用症候群」を引き起こす可能性があります。そのため、骨折の程度(ずれ)が軽度であっても大腿骨頚部骨折では手術が適応となります。

 手術には骨を金属などの器具で固定して折れた部分を接合する「骨接合術」または骨を人工物に置き換える「人工骨頭置換術」があります。

 さらに、骨粗鬆症があれば骨粗鬆症の治療3原則である「食事療法・運動療法・薬物療法」を並行して行います

※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。

鼠径部痛症候群(そけいぶつうしょうこうぐん)

 鼠径部痛症候群はサッカー・アメリカンフットボール・ラグビー選手に多くみられる病気です。別名「グロインペイン症候群」とも呼ばれ、一度発症すると治りにくい特徴があります。

 主な症状は左右の足の付け根にある溝部分(鼠径部)やその周辺の痛みで、起き上がり・ランニング・キック動作などお腹に力を入れたときに現れます。

(図)鼠径部痛症候群の痛みの部位|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/groin_pain.html

 鼠径部痛症候群の原因は、体幹から股関節周辺の機能障害による鼠径部の負荷です。

 足の外傷後やスポーツで体幹から股関節周りの筋肉・関節を使いすぎると、筋力低下・柔軟性低下、さらには体幹と股関節が効率的に動かなくなる「協調性の低下」が起こります体のバランスが崩れることで鼠径部への負担が蓄積し、痛みが生じます。また、不自然な使い方を続けることによって痛みと機能障害の悪循環が生まれ、症状が慢性化します。

 サッカーの片足で立ってボールを蹴る動作自体が、発症の誘因となります。

 鼠径部痛症候群は、サッカーなど片足立ちでキックを多用するスポーツをしていて、鼠径部の痛みや圧痛などがあれば、診断可能です。
治療の基本は保存的治療です。局所安静(ランニングやキックの禁止)、アイシングなどを行い、痛みがあるときには消炎鎮痛剤を使います。痛みが落ち着いてきたら、体の可動性・安定性・協調性の問題を評価した上で、リハビリテーション(運動療法)を積極的に行います

(図)鼠径部痛症候群のリハビリテーション例|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/groin_pain.htm

大腿骨頭すべり症(だいたいこっとうすべりしょう)

 大腿骨頭すべり症は大腿骨の付け根部分(大腿骨骨端:だいたいこつこつたん)が下にある成長軟骨から後方内側にずれた状態になることです。特に急に身長が伸びだす10歳~15歳頃の体の大きい(太った)男児に多くみられます

 股関節の軽い痛みや足を引きずって歩く跛行が主な症状となりますが、太もも・膝の痛みから始まることも少なくありません。

 大腿骨頭すべり症の原因は、肥満や成長期のスポーツ活動による大腿骨の成長軟骨への負荷です。成長期の骨は、成長軟骨(骨端線)と呼ばれる軟骨組織が骨の端に存在するため、そもそも力学的に弱い構造となっています。また、成長ホルモンと性ホルモンの異常によって発症することもあります

 大腿骨頭すべり症は、X線検査や超音波検査から診断します。必要に応じてCT検査・MRI検査を行うことがあります。

 大腿骨頭すべり症と診断されたら、大腿骨頭へ負荷をかけないようにすることが大事です。治療は金属固定もしくは骨切術など手術となります。

※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。

関節リウマチ(かんせつりうまち)

 関節リウマチは30~50代女性に多くみられ、日本では約60~100万人の患者さんがいるとされています。主に両方の手または足の指の関節に炎症が起って腫れ・痛みが現れる病気ですが、股関節にも関節炎が広がり痛みが現れることがあります。

 関節リウマチの発症原因は明らかになっていませんが、自分の免疫に異常が起こり、間違って滑膜(関節液を作る役割)を攻撃してしまうことによって関節炎などを起こす「自己免疫疾患」と考えられています。

(図)関節リウマチの関節

 関節リウマチによる関節炎は左右対称に現れる特徴があり、関節を動かさなくても痛みがあることが他の関節炎とは異なります。一般的には朝方に手・足の指の腫れ・こわばり(動かしにくさ)を感じる症状から始まります。関節炎の重症度には個人差があり、全身の関節へ広がったり、貧血・体のだるさなどの全身症状がみられたりすることもあります。進行すると、関節の変形や関節周囲の骨の破壊を引き起こしますが、「早期発見・早期治療」を行うことで関節の変形や骨の破壊を防ぐ可能性が高まります。気になる症状が現れたら、すみやかに受診するようにしましょう。

(画像引用)関節リウマチの手足の変形|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rheumatoid_arthritis.html

 関節リウマチは、アメリカのリウマチ学会による診断基準を元に、自覚症状や症状が現れてからの期間などの問診・視診・触診、血液検査、X線検査などから総合的に判断します。

 関節リウマチの特効薬は今のところありません。治療の基本は薬物療法による対症療法で抗リウマチ薬(メトトレキサートなど)を中心に処方します。そのほか、ステロイド剤・免疫抑制剤・生物学的製剤やステロイドおよびヒアルロン酸の関節内注射、リハビリテーションも効果的です。変形が進行してしまった場合には外科的手術を検討することがあります。

※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。

 なお、原因不明なため有効な予防法は明らかになっていませんが、悪化を防ぐには栄養バランスの取れた食事と十分な休養が重要です。

単純性股関節炎(たんじゅんせいこかんせつえん)

 単純性股関節炎は、子どもの股関節炎の中で一番多い病気です。股関節に関節液(水)が溜まることによって突然、太ももや膝に痛みが現れます痛みは強くありませんが続くため、足を動かさない・足を引きずりながら歩く様子がみられます。また、股関節の動きも悪くなります。

 はっきりとした原因は分かっていませんが、軽い風邪の後や運動の後などにみられることがあります

 単純性股関節炎は超音波検査によって関節液の貯留を確認することで診断します。またX線検査では骨の異常はありませんが、関節液がたくさん溜まっている場合にはX線検査でも関節の隙間の広がりが確認できます。なお、発熱があるときは関節穿刺(かんせつせんし)*6を行って関節液を調べます。

*6関節穿刺:関節に注射して、関節液を採取すること

 単純性股関節炎治療の基本は「安静」です。単純性股関節炎は別名「一過性股関節炎」とも呼ばれ、立ったり座ったり歩いたりせず布団の上でゆっくり過ごせば、2週間前後で股関節炎は改善できます。ただし、自宅で安静できないときには、入院加療を検討することとなります。

※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。

ペルテス病(ぺるてすびょう)

 ペルテス病は原因不明の血流障害による股関節側の大腿骨(足の付け根)が壊死する病気です。壊死により骨の強度が弱くなるため、放置していると次第に骨が潰れ変形していきます。特に4歳~7歳までの身長の低い元気な男児(女児の約5倍)に多くみられる病気です。

 主な症状は軽い股関節の痛みや跛行(びっこ)ですが、痛みは大腿骨~膝までの太もも前面に感じることもよくあります。ほかにも、あぐらがかきにくくなるなど股関節が動かしにくくなったり、動かさないことによって同じ側の太ももやお尻の筋肉がやせてしまったりすることがあります。

 ペルテス病の根本原因である血流障害の発生理由は分かっていません。とはいえ、大人にみられる「特発性大腿骨頭壊死症」とは違い、ペルテス病は通常約3~5年で血流の再開通がみられるため、経過は悪くありません

 ペルテス病は問診・視診・触診のほか、X線検査から診断します。ただし、発症初期では分かりにくいことがあるため、MRI検査を行うことがあります。

 ペルテス病の予防はできません。骨頭が潰れて変形したまま骨の新生が起こると、将来的に変形性股関節症へ進展することがあるので、大腿骨骨頭の潰れを防ぐことに注力して治療を進めます。

 ペルテス病の治療は、骨頭の潰れを骨頭に負荷をかけないようにする「免荷装具療法」を基本としています。ただし、壊死の範囲が広いケースでは骨盤や大腿骨を手術で切除する「骨切術」を行うことがあります。治療方法は年齢や病巣範囲によって選択されますが、発症年齢が3歳以下など小さなお子さんの場合には「経過観察」として、特に治療を行わなくてよいこともあります。

※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。

院長からひと言

 股関節は最も得意とする部分、分野です。

 股関節は球関節で、ボールがお椀の中にはまり込んだような関節の形をしているので、関節の中では比較的安定した関節と言えます。しかし、股関節は体重がかかる関節の中でも重要な関節であり、股関節に関節の変形や可動域の制限が起こると、起立・歩行など日常生活に大きく影響します。

 乳児から幼児、成長期を過ぎて成人、壮年、老年に至るまで、どの年齢でもその年齢に特徴的な病気が知られています。

 股関節に痛みや関節の障害が起こった時には、年齢や症状、スポーツ歴、痛みの場所や誘発テスト、画像診断などを行い、病気を的確に診断し適切な治療を行うことが必要です。

 保存的に治療できる場合には早期からリハビリテーションを積極的に行います。また、将来的に手術が必要になるとしても、できるだけ手術までの時間を遅らせることができるように、お手伝いをさせていただきます。

 股関節の異常を感じた場合には、お早めにいつでも当院にご相談ください。

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