「もう手術しかないと言われたけど、どうしても避けたい」
そんな想いを持つ方が、近年とても増えています。整形外科の現場でも、再生医療によって手術を“先延ばし”または“回避できる可能性”が見えてきました。
今回は、変形性股関節症における再生医療の役割と、実際の治療でわかっている「現実的な効果」について、専門医の立場からわかりやすく解説します。

なぜ「手術しかない」と言われるのか?
変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減り、関節内で炎症や変形が進む病気です。
初期には痛みが軽くても、進行とともに「歩くとズキッ」「靴下が履けない」など、日常生活に影響が出てきます。
多くの医療機関では、
– 痛み止め
– ヒアルロン酸注射
– リハビリ
を行い、それでも改善が乏しい場合に人工股関節手術が選択肢に挙げられます。
ですが「手術しかない」と言われた患者さんの中には、まだ軟骨が一部残っているケースも少なくありません。
この“グレーゾーンの段階”で、再生医療が活きてくるのです。
再生医療とは?PRP・APS療法の仕組み
PRP療法(多血小板血漿注射)
自分の血液を採取し、血小板成分を濃縮して注射する治療です。
血小板には炎症を抑え、組織の修復を促す成長因子が多く含まれています。
軟骨や関節内の炎症を鎮め、痛みを軽減する効果が期待されます。
APS療法(自己たんぱく溶液注射)
PRPをさらに精製して、炎症を抑える成分を高濃度で抽出した治療です。
関節内のサイトカインバランスを整え、炎症性因子を抑制。
特に中等度以上の変形性関節症で、より強い抗炎症効果が報告されています。
いずれも自分の血液を使うため、副作用の少ない安全な治療として注目されています。

Doktor K?k H?cre CGF tedavisini uyguluyor.
「手術を先延ばしできる」ケースと「難しい」ケース
再生医療で手術を“先延ばし”できるかどうかは、股関節の変形の進行度によって大きく異なります。
手術を先延ばしできるケース
- 軟骨が一部残っている(初期〜中期)
- 歩行距離が保たれている(500m以上歩ける)
- レントゲンで関節の隙間がまだ残っている
効果が限定的なケース
- 関節が完全に変形し、骨同士が接している
- 夜間痛・安静時痛が強く、歩行困難
- すでに人工関節を検討されている段階
再生医療は「壊れた関節を元通りに戻す」治療ではありません。
しかし、炎症を抑え、痛みを和らげ、進行を遅らせることで、
「手術の時期を先に延ばす」ことは十分に可能です。
実際の治療の流れと経過
- 診察・検査: レントゲン・MRIで関節内の状態を確認
- 採血: 自分の血液を15〜90mlほど採取
- 成分の抽出・注射: 約15~30分で血小板成分を抽出し、関節内に注射
- 経過観察: 1〜3か月おきに経過を確認し、必要に応じてリハビリ併用
症状の改善は早い方で1〜2週間、
多くは1か月前後から「痛みが軽くなった」「歩きやすくなった」という声が多く見られます。
費用と効果のバランスをどう考えるか
再生医療は自由診療であり、費用は1回あたり5万〜30万円前後が一般的です。
確かに安くはありません。
しかし、手術に比べてリスクが少なく、仕事や家事を休まずに治療できるというメリットがあります。
また、1回の注射で効果が半年〜1年ほど続くケースもあり、
長期的には「痛み止めや注射を繰り返すよりも経済的」という方もいらっしゃいます。
再生医療を受ける前に知っておくべき3つのこと
- 万能ではない: 関節を完全に再生させる治療ではなく、あくまで“修復促進と炎症抑制”が目的。
- 適応が大切: 画像診断で「軟骨が少し残っている」段階がベスト。
- リハビリと併用: 再生医療単独より、リハビリ・姿勢改善を組み合わせた方が効果が高い。
まとめ|“まだ手術したくない”あなたへ
変形性股関節症の治療は、「手術するか、しないか」だけではありません。
その間にある“グレーゾーンの治療”こそ、再生医療が担う新しい選択肢です。
手術を急がず、まずは自分の関節を少しでも長く使うために、
再生医療という選択を検討してみてください。
「手術を避けたい」「でも痛みをなんとかしたい」あなたへ
阿部整形外科クリニックでは、MRI診断と再生医療(PRP・APS)を組み合わせ、
“手術に頼らない股関節治療”を行っています。
この記事の監修者
阿部 瑞洋(あべ みずひろ)
整形外科専門医/阿部整形外科クリニック 院長(東京都三鷹市・武蔵境)
股関節・膝関節の再生医療・保存療法を専門とし、
「手術以外の選択肢を提供する医療」を実践。
▶ 阿部整形外科クリニック公式サイト

