【整形外科医監修】股関節の痛みが長引くときに考えられる病気一覧|原因と治療法を徹底解説

原因、症状

はじめに|「まだ若いのに股関節が痛い…」は要注意?

「立ち上がるときに股関節がズキッと痛む」
「歩くたびに違和感があるけど、疲れのせいかと思っていた」
「痛みが2週間以上も続いている…」

 このように、股関節の痛みが長引いている方は意外に多いものです。
一時的な筋肉疲労なら自然に治ることもありますが、慢性化している場合は「病気」が原因である可能性があります。

 このブログでは、股関節の痛みが長引くときに考えられる主な病気一覧と、その原因・治療法について、わかりやすくまとめました。


股関節痛が「長引く」とは?目安と危険サイン

いつまで続いたら“要注意”?

 一般的に、運動後の筋肉痛などは数日〜1週間以内に改善します。
それ以上続く場合や、次のような症状を伴う場合は早めの受診が必要です。

要注意のサイン

  • 股関節痛が2週間以上続いている

  • 安静時や就寝中にも痛みがある

  • 足を引きずる/跛行がある

  • 片足立ちや階段の昇降が難しい

  • 股関節以外(太もも・膝・腰)にも痛みが広がっている


股関節の痛みが長引くときに考えられる病気一覧と原因

① 変形性股関節症

原因

  • 加齢により股関節の軟骨がすり減る

  • 先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全の既往歴

主な症状

  • 立ち上がりや歩き始めの痛み

  • 股関節の動きが制限される

  • 徐々に悪化し、日常生活に支障が出る

治療法

  • 保存療法(リハビリ・体重管理・消炎鎮痛薬)

  • 進行時は人工股関節置換術が選択肢に


 ② 特発性大腿骨頭壊死症

原因

  • 血流障害により大腿骨頭が壊死する病気

  • ステロイド薬の長期使用、大量の飲酒、原因不明(特発性)

主な症状

  • 動作時の股関節痛/安静時にも痛む

  • 初期はレントゲンで見つかりにくい

治療法

  • MRI検査で早期発見

  • 進行度に応じて、保存療法 or 骨切り術/人工関節


 ③ 股関節インピンジメント(FAI)

原因

  • 骨盤側または大腿骨側の骨形状異常により、関節内で衝突が起こる

  • 若年〜中年層のアスリートに多い

主な症状

  • 股関節の前方やそけい部の痛み

  • 長時間の座位、前屈、開脚動作で痛みが出る

治療法

  • 体幹・股関節周囲筋のリハビリ

  • 関節鏡による骨整形手術が行われることも


④ グローインペイン症候群(鼠径部痛症候群)

原因

  • 内転筋や腸腰筋、恥骨部の過負荷や炎症

  • サッカーやラグビーなど、キック・切り返し動作の多い競技者に多い

主な症状

  • 股関節や下腹部の不明瞭な痛み

  • 運動時に悪化し、休養で軽快するが再発しやすい

治療法

  • 運動制限、ストレッチ、体幹強化

  • 慢性化した場合は理学療法士による再発予防指導が有効


⑤ 関節リウマチ

原因

  • 自己免疫の異常により関節が慢性的に炎症を起こす疾患

主な症状

  • 朝のこわばり/左右対称の関節痛

  • 股関節の他、手指や膝などにも痛みが出ることがある

治療法

  • 抗リウマチ薬、生物学的製剤などを使用

  • 整形外科とリウマチ専門医の連携が大切


 ⑥ 感染性股関節炎

 原因

  • 細菌感染による股関節内の炎症

  • 手術後、免疫低下時、血行性感染などで起こる

主な症状

  • 発熱・股関節の腫れ・強い痛み

  • 急激に悪化し、歩行困難に

治療法

  • 入院のうえ抗生物質の点滴投与

  • 関節洗浄やドレナージ術が必要な場合も


いつ整形外科を受診すべきか?判断の目安

  • 痛みが2週間以上続いている

  • 安静時や夜間にも痛みがある

  • 足を引きずる・跛行がある

  • 股関節の動きが硬くなった

  • 発熱や腫れなど、炎症症状を伴う

これらの症状がある場合は、早めに整形外科や関節専門クリニックの受診をおすすめします。


股関節痛の治療を成功させる3つのポイント

① 正確な診断が第一

股関節痛の原因は非常に多岐にわたるため、画像検査(MRIやCT)や血液検査を含めた専門的な診断が不可欠です。

② 病期に応じた適切な治療を選ぶ

早期であればリハビリや保存療法で改善が見込めることも多く、手術は最後の手段。しかし、適切なタイミングでの判断が重要です。

③ 無理をしない、継続したケアが大切

一時的に痛みが和らいでも、無理に動かすと再発や悪化のリスクがあります。医師・理学療法士の指導のもと、継続的なケアを心がけましょう。


まとめ|股関節の痛みが長引くときこそ“診断”がカギ

 股関節痛は「年のせい」や「運動不足」と自己判断しがちですが、
その裏には重大な病気が隠れていることも珍しくありません。

▶ 記事のまとめ

  • 長引く股関節痛には、関節・筋肉・神経・感染など多様な原因がある

  • 早期の診断と的確な治療が、将来のQOL(生活の質)を守る

  • 「まだ大丈夫」は禁物。気になる痛みは早めに整形外科へ

 長引く股関節の痛みがある方は、一度しっかりと検査を受け、ご自身の体と向き合う時間を取ってみてください。


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この記事を執筆した人

阿部 瑞洋 医師

  • 整形外科専門医
  • 股関節専門医

一般社団法人エンジョイワーク 阿部整形外科クリニック 院長。
股関節・膝関節の保存療法および再生医療に精通し、年間延べ3万人以上の患者様の診療実績を持つ。最新の医療と親身なカウンセリングで、地域医療に貢献している。

股関節の再生医療PRP療法|阿部整形外科クリニック

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