「最近、階段の上り下りで足の付け根が痛い」「歩くときに違和感がある」——そんな声をよく耳にします。
しかし、その痛みを「年齢のせい」と片づけてしまうのは危険です。放置すれば、将来的に歩行が難しくなるリスクもあるのです。

股関節の痛みが起こるメカニズム
股関節は、体重を支えるために非常に大きな力が加わる関節です。
歩行・立ち上がり・階段などの日常動作で、常に摩擦と圧力を受けています。
加齢により軟骨がすり減ると、クッションの役割を果たせなくなり、骨同士がぶつかって痛みや炎症を引き起こします。
階段の上り下りで痛む理由
- 上りでは股関節を深く曲げるため、前面の骨同士が衝突しやすい
- 下りでは片脚に体重がかかり、支える筋力が不足すると不安定になる
40代・50代に多い股関節のトラブル
① 変形性股関節症(初期)
40代以降、特に女性に多くみられるのが変形性股関節症の初期段階です。
軟骨がすり減り、股関節に炎症が起きやすくなります。
「歩き始めに痛い」「階段を上るときにズキッとする」といった症状が特徴です。
こんなサインが出ていませんか?
- 靴下を履くときに足が上げにくい
- 椅子から立ち上がるときに股関節が痛む
- 寝返りで違和感がある
- 長く歩くと足の付け根がだるくなる
② 股関節インピンジメント(FAI)
骨の形がわずかに異常なために、股関節の動作中に骨と骨がぶつかる状態です。
スポーツ経験者や柔軟性の高い人に多く、放置すると軟骨損傷につながることもあります。
③ 臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)
生まれつき股関節の受け皿が浅く、加齢とともに負担が集中して痛みが出る状態です。
40〜50代で症状が顕著になり、変形性股関節症の原因にもなります。
セルフチェック|股関節トラブルの危険サイン
- 立ち上がりや歩き始めで足の付け根が痛む
- 階段を下りるときに違和感や抜ける感じがある
- 股関節を内側にひねると痛みが強くなる
- 足を上げる動作がつらくなる
これらが続く場合は、整形外科での早期診断が重要です。
特にレントゲンやMRIで原因を特定することが、最適な治療法を見つける第一歩です。
治療と予防|痛みを悪化させないために
日常動作の工夫
- 段差の大きい階段を避け、手すりを活用する
- 長時間の立ち仕事を控え、休憩をこまめに取る
- 入浴などで股関節を温め、血流を良くする
リハビリ・運動療法
理学療法士の指導のもと、股関節周囲の筋肉(中臀筋・腸腰筋など)を鍛える運動を行うことで、安定性が高まり、痛みの軽減につながります。
おすすめのトレーニング
- お尻歩き(骨盤の安定化)
- ヒップアブダクション(中臀筋強化)
- 股関節まわし運動(可動域改善)
再生医療という新しい選択肢
近年注目されているのが、PRP療法(多血小板血漿)や幹細胞治療といった再生医療です。
自分の血液や細胞を利用して炎症を抑え、軟骨の修復を促すことを目的としています。
初期の変形性股関節症においては、関節の機能改善・痛みの軽減に効果が期待されています。
当院では、患者さん一人ひとりの関節状態をMRIで正確に評価し、
保存療法から再生医療までをトータルに提案しています。
「その股関節の違和感、放置していませんか?」
阿部整形外科クリニックでは、初期の股関節トラブルに対し、
再生医療(PRP・APS・幹細胞治療)を含む多角的な治療を行っています。
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まとめ|“年齢のせい”ではなく、原因を知ることが第一歩
40代・50代で現れる股関節の痛みは、「年齢」だけでなく、関節や筋肉の変化が原因であることが多いです。
早めに原因を知り、適切なケアを行うことで、将来の歩行能力を守ることができます。
「少しおかしいな」と感じたら、迷わず専門医にご相談ください。
この記事の監修者
阿部 瑞洋(あべ みずひろ)
整形外科専門医/阿部整形外科クリニック 院長(東京都三鷹市・武蔵境駅)
変形性関節症や股関節・膝関節の再生医療を専門とし、
「手術以外の選択肢を患者に提供する医療」を実践。
▶ 阿部整形外科クリニック公式サイト