「ヒアルロン酸注射を何回か受けたけど、最近あまり効かなくなってきた…」
そんな疑問を持つ方が増えています。
どちらも関節の痛みに対して行われる注射治療ですが、“目的と作用の仕組み”はまったく異なります。
今回は、整形外科専門医がPRP注射とヒアルロン酸注射の違いをわかりやすく比較し、
どんな人にどちらが向いているのかを解説します。

ヒアルロン酸注射とは?
ヒアルロン酸は、もともと人の関節液に含まれている“潤滑成分”です。
注射することで、関節内の滑りを良くし、痛みを一時的に軽減します。
特に初期の関節症や、炎症が軽い時期に効果を発揮しますが、
注射の効果は1〜2週間ほどと短く、定期的な注射が必要になるケースが多いです。
- 関節の動きを滑らかにする
- 炎症を和らげる(軽度)
- 短期間で痛みを抑える
ただし、変形が進行した状態では関節内の摩耗が強く、
ヒアルロン酸だけでは効果が持続しにくくなります。
PRP注射とは?
PRP(多血小板血漿)注射は、自分の血液から抽出した“修復成分”を関節に戻す治療です。
血小板に含まれる成長因子(グロースファクター)が、組織の修復と炎症の抑制を助けます。
ヒアルロン酸が「潤滑油」だとすれば、PRPは「細胞の修復促進剤」です。
- 炎症を抑える
- 軟骨や腱の修復を促す
- 効果が6か月〜1年と長持ち
特に、ヒアルロン酸で改善が乏しかった中期の関節症に有効で、
手術を避けたい方にも注目されています。

PRP注射とヒアルロン酸注射の違いを比較
| 比較項目 | ヒアルロン酸注射 | PRP注射 |
|---|---|---|
| 成分 | ヒアルロン酸 | 自分の血液由来(血小板) |
| 目的 | 関節の潤滑と痛みの緩和 | 炎症抑制と組織修復 |
| 持続期間 | 1〜2週間 | 6か月〜12か月 |
| 効果の出方 | 即効性がある | 数日〜数週で徐々に改善 |
| 適応 | 軽度〜中等度の関節症 | 初期〜中期、手術を避けたい方 |
| 費用 | 保険適用(1,000〜2,000円前後) | 自由診療(5万〜30万円前後) |
| 副作用 | ほぼなし | 自己血液由来のため安全性が高い |
どちらが優れているというよりも、目的が違うのです。
痛みの原因や進行度に合わせて、治療を選択することが大切です。
どんな人にPRP注射が向いている?
- ヒアルロン酸を続けても改善が乏しい
- 手術は避けたいが、痛みを軽くしたい
- 仕事や趣味を休めない
- 副作用が少ない治療を希望している
PRPは、炎症を抑えながら関節内の環境を整えるため、
「進行を遅らせたい」「もう少し自分の関節で歩きたい」という方に最適です。

再生医療の進化:APS療法との違い
PRPをさらに精製し、炎症を抑える成分を高濃度にしたのがAPS療法です。
より中〜重度の変形性関節症に適応され、
抗炎症効果と修復促進作用を両立させることができます。
APSは1回の注射で長期間効果が持続する報告もあり、
「手術前の最後の選択肢」として注目されています。
まとめ|注射の“目的”を理解して選ぼう
ヒアルロン酸注射は「痛みを和らげる潤滑剤」。
PRP注射は「炎症を抑え、関節の修復を促す再生医療」。
どちらも正しく使えば効果的ですが、
自分の状態に合った治療を選ぶことが、最も大切です。
阿部整形外科クリニックでは、MRIで関節の状態を丁寧に確認し、
ヒアルロン酸・PRP・APSの中から最適な方法をご提案しています。

「ヒアルロン酸を続けても良くならない…」そんな方へ
阿部整形外科クリニックでは、PRPなどの再生医療を活用し、
“手術を避けながら痛みを改善する”治療を行っています。
この記事の監修者
阿部 瑞洋(あべ みずひろ)
整形外科専門医/阿部整形外科クリニック 院長(東京都三鷹市・武蔵境)
股関節・膝関節の再生医療・保存療法を専門とし、
「手術以外の選択肢を提供する医療」を実践。
▶ 阿部整形外科クリニック公式サイト

