「先生、股関節が痛いので、筋力を落とさないように毎日1万歩、痛みを我慢して歩いています!」
「関節が固まらないように、お風呂上がりに無理やり開脚ストレッチをしています!」
診察室で患者様からこのような「努力の報告」を受けるたび、僕は整形外科医として胸が締め付けられる思いになります。なぜなら、その真面目な努力が、自ら股関節の軟骨をすり減らし、寿命を縮めているからです。
こんにちは。阿部整形外科クリニック院長の阿部です。
骨折から3ヶ月が過ぎ、僕の左足も全体重をかけられるようになり、歩くスピードも大分速くなってきました。もうすぐ大好きなゴルフも再開できそうです。しかし、ここまで最速で回復できたのは、「やってはいけないこと」を医学的根拠に基づいて徹底的に避けてきたからです。
今回は、「良かれと思ってやっているのに、実は関節を破壊している3つのNG習慣」について、結論から、そして具体的な数値目標とともにお伝えします。

NG習慣①:痛みを我慢して「とにかく歩く(過度なウォーキング)」
【結論】炎症が起きている股関節に体重をかけ続けるのは、軟骨のヤスリがけです。
筋肉をつけなければいけない、という焦りは分かります。しかし、歩くたびに股関節には体重の3〜5倍の衝撃がかかります。
少し視点を変えて、「パンクした車」を想像してみてください。タイヤの空気が抜けて(軟骨がすり減って)ガタガタ言っているのに、「エンジン(筋肉)を鍛えなきゃ!」と無理やり走り続けたらどうなるでしょうか? タイヤだけでなく、金属のホイール(骨)までボロボロに破壊されてしまいますよね。
【専門医からの数値目標】
ウォーキングの目安は「歩き終わった後、あるいは翌朝に痛みが強くなっていないか」です。
もし「15分」歩いて痛みが強くなるなら、今のあなたの限界は15分未満です。無理に歩数を稼ぐのではなく、水中ウォーキングやエアロバイクなど、「体重(重力)をかけずに筋肉を動かす」方法に切り替えてください。
NG習慣②:痛い関節を「無理に開脚してストレッチする」
【結論】変形した関節を無理に広げると、関節唇(軟骨のフチ)を挟み込んで損傷します。
「体が硬いから痛いんだ」と思い込み、YouTubeなどを見ながら痛みをこらえて股関節をグイグイと押し開く方がいます。これも大変危険です。
これも水平思考で「錆びついたドアの蝶番(ちょうつがい)」に例えましょう。錆びて動きが悪いドアを、力任せにバキバキと開け閉めしたら、根元から壊れてしまいますよね。本当に必要なのは、力任せに動かすことではなく、周りのネジを緩め、潤滑油をさすことです。
【専門医からの数値目標】
股関節のストレッチは、痛みのない「最大可動域の70%」の力で行うのが鉄則です。また、関節そのものを伸ばすのではなく、股関節を動かす「お尻の筋肉(大臀筋・中殿筋)」や「太ももの前(大腿四頭筋)」を優しくほぐす(テニスボールを当てるなど)ことに集中してください。

NG習慣③:「床に座る・極端に低い椅子」での生活習慣
【結論】股関節が深く曲がる動作は、関節内部の圧力を異常に高めます。
日本人の生活習慣に多い「あぐら」「横座り」「ぺしゃんこ座り(W座り)」。これらは、股関節を極端に捻り、骨同士をテコの原理で強くぶつけてしまう最悪の姿勢です。針金を何度も同じ場所で折り曲げていると、やがて金属疲労でポキッと折れてしまうのと同じ現象が関節内で起きています。
【専門医からの数値目標】
今日から「90度ルール」を守ってください。椅子に座った時、股関節よりも「膝の位置が下、あるいは同じ高さ(90度)」になるのが正解です。膝が股関節より高くなるような低い椅子(座面高が40cm未満のソファなど)は、立ち上がる際に関節を破壊します。和式から洋式への生活のシフトが、股関節を守る絶対条件です。

「ダメ」と言うだけではなく、正しい努力を共に探すのが当院です
いかがでしたでしょうか。耳の痛い話もあったかもしれません。
しかし、皆さんが「治したい」と願って努力しているそのお気持ちは、本当に素晴らしいものです。方向性が少しズレていただけで、その情熱を「正しいリハビリ」に向ければ、身体は必ず応えてくれます。
僕たち阿部整形外科クリニックは、「あれもダメ、これもダメ」と禁止するのではなく、当院が誇る8人のリハビリスタッフが、「あなたの今の関節なら、この運動を、この角度で、これくらいの回数やりましょう」と、正しい努力の方向へ導きます。
「~できるようになるといいですよね!」
「ご家族も、あなたが毎日痛みを我慢して歩いている姿を見るのは辛いはずです。正しい知識で、効率よく、楽に治していきましょう」
「~できるようになるといいですよね!」
間違った習慣を捨てて、正しい動きを身につければ、朝起きた時のあの一歩目の激痛から解放される日は必ず来ます。また気兼ねなく、旅行で美しい景色を見に行きましょう。
「できるだけ早く治して、笑顔でここを卒業しましょう!」
僕自身、松葉杖から自分の足で歩けるようになった喜びを噛み締めています。身体は、正しく扱えば必ず復活します。間違った習慣で軟骨をすり減らしてしまう前に、まずは僕に今の状態を診せてください。診察室でお待ちしています!

「その努力、本当に股関節のためになっていますか?」
良かれと思ってやっていることが、逆効果になっているかもしれません。
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