「最近、立ち上がる瞬間に足の付け根がズキッ」「長く歩くと股関節が重だるい」——40〜50代の女性から、こんな相談を多く受けます。
結論から言うと、手術に頼らずに改善を目指せるケースは少なくありません。本記事では、保存療法と再生医療(PRP)を中心に、生活の質を落とさずに痛みをコントロールしていく最新アプローチを、整形外科の専門視点で解説します。
40〜50代女性に多い「股関節痛」の特徴基礎知識
よくある初期サイン
- 立ち上がり・歩き始めに「ズキッ」と痛む
- 階段の上り下りや長時間歩行で違和感が増す
- 靴下を履く/足の爪を切る姿勢がつらい
背景にある変化
更年期に伴うホルモンバランスの変化、筋力低下、体重変動、立ち仕事や家事での反復負荷などが組み合わさり、股関節(寛骨臼と大腿骨頭)に負担が集中しやすくなります。放置で変形性股関節症へ進むと、痛み・可動域制限・日常の不自由が増大します。
なぜ「手術以外の治療」が注目されているのか
人工股関節置換術は有効な治療選択肢ですが、入院・術後リハビリ・合併症リスク、そして「まだ手術は早いのでは」という心理的抵抗も事実。
医学の進歩により、保存療法と再生医療の質が向上し、「痛みを抑えつつ、生活を止めない」治療デザインが現実的になっています。
保存療法:まず取り組むべき“土台”
① 運動療法(家でできる要点)
- 股関節の可動域アップ:座位での外旋/内旋ストレッチ、腸腰筋ストレッチを1日5〜10分
- 筋力トレーニング:中殿筋(横向き足上げ)、大殿筋(ヒップヒンジ)、大腿四頭筋(クォータースクワット)を週3回
- 痛みの尺度化:「0〜10」で痛みを記録し、悪化前に調整(やり過ぎ防止)
② 物理療法(外来でのサポート)
温熱や電気刺激で血流を促し痛みを緩和。
「痛まない範囲で動ける」状態を作ると、運動療法の効果が乗りやすくなります。
③ 体重・生活習慣
- 体重1kg減で股関節負荷は複利的に軽くなるイメージ
- 長時間立ちっぱなしは45〜60分で小休止
- 靴は安定性の高いものを(ヒール高は控えめに)
再生医療(PRP):自分の治癒力を引き出す
PRPとは?
患者さん自身の血液から血小板を多く含む成分(多血小板血漿)を抽出し、患部に注入。血小板に含まれる各種成長因子が、炎症を鎮め、修復プロセスを後押しします。
期待できること
- 痛みの軽減(特に活動時痛)
- こわばりの緩和、動かし始めの負担感の減少
- 運動療法の取り組みやすさ向上(=結果が出やすい)
- 関節軟骨の再生
安全性と他注射との違い
- 自己血由来のため副反応リスクが低い
- ヒアルロン酸:潤滑・保護が中心/PRP:修復プロセスを促す点が本質的な違い
- ステロイド:炎症を抑える即効性はあるが、反復は慎重にしないと骨粗鬆症を起こす
適している方
- 「手術は避けたいが、今の痛みを何とかしたい」
- 保存療法だけでは頭打ちを感じている
- 仕事・家事・趣味を止めたくない(ダウンタイム最小志向)
施術の流れ(当院の一例)
- 診察・評価(痛みの種類、可動域、歩行、画像)
- 採血→専用機器で濃縮(衛生管理の徹底)
- エコーガイドで注入(股関節へ正確に)
- 数日間は無理を避け、段階的にリハビリ再開
※症状・ライフスタイルに応じて回数や間隔を設計します。詳しくは診察でご相談ください。
良くなる人の共通点:リハビリの“質”
PRPを含む注射治療は「きっかけ」です。
その効果を持続させるのは、正しいフォームと継続のしやすさを両立したリハビリです。
当院で重視していること
- 個別設計:可動域・痛み・生活動線に合わせた“やり切れる”メニュー
- フォーム指導:動画や鏡を使い、負担を関節から筋へ「逃がす」
- 再発予防:歩行・階段・立ち上がりの“使い方”を習慣化
自宅でできるミニルーティン(目安合計10分)
- 腸腰筋ストレッチ:左右30秒×2
- 中殿筋トレ(横向き足上げ):左右10回×2
- ヒップヒンジ練習:10回×2(股関節主導の動きに慣れる)
当院が選ばれる理由
- 再生医療(PRP)に注力:適応評価と安全管理を重視
- 手術に頼らない治療提案:保存療法×再生医療×リハビリの三位一体
- 明るく開放的な院内:清潔・動線配慮で通いやすい
- 温かいスタッフ:不安に寄り添い、続けやすさをサポート
「受付の笑顔に安心した」「説明がわかりやすい」「家でも続けられた」など、40〜50代の女性から多くのご感想をいただいています。
よくある質問(FAQ)
Q. 手術せずに本当に良くなりますか?
症状の段階や生活動線により個人差はありますが、保存療法と再生医療を組み合わせることで、痛みの軽減や動きやすさの改善を目指せる方は多くいらっしゃいます。診察で適応を評価し、無理のない計画をご提案します。
Q. PRPのダウンタイムは?
当日は安静を推奨します。数日は違和感が出る場合がありますが、多くは数日〜1週間程度で日常生活に戻れます。スケジュールに合わせて実施時期を設計します。
Q. どのくらいの頻度で必要ですか?
症状・目的により異なります。単回で効果を実感する方もいれば、数回計画的に行うケースもあります。診察時に最適な回数・間隔をご提案します。
Q. ヒアルロン酸注射とどう違いますか?
ヒアルロン酸は潤滑・保護が中心、PRPは組織修復プロセスを後押しする点が異なります。症状やライフスタイルに応じて選択・併用を検討します。
まとめ:手術に頼らない選択肢で、あなたらしい毎日へ
股関節痛は「年齢だから仕方ない」と諦める必要はありません。
保存療法×再生医療×質の高いリハビリで、痛みを抑えつつ動ける身体を目指せます。まずは今の状態を丁寧に評価し、あなたに合う一歩から一緒に始めましょう。
日本整形外科学会認定専門医。阿部整形外科クリニック院長。再生医療と保存療法を組み合わせた股関節治療に精通。