足の付け根が右・左だけ痛いのはなぜ?

リハビリテーション、エクササイズ
「右の足の付け根だけが、歩くたびに痛むんです」

「左側だけなので、少し体をひねっただけでしょうか?」

診察室では、このようなご相談をよくいただきます。

左右のどちらか一方だけに痛みがあると、「両方ではないから大したことはない」「少し休めば治るだろう」と考えてしまう方も少なくありません。

しかし、股関節の病気は、必ずしも左右同時に始まるわけではありません。骨格や関節の形、筋力、仕事やスポーツでの体の使い方などが左右で異なるため、最初は片側だけに症状が現れることがあります。

こんにちは、阿部整形外科クリニックの阿部です。

僕が患者さんにお伝えしたいのは、右か左かだけで病名を決めることはできない、ということです。

大切なのは、どこが痛むのか、どの動作で痛むのか、いつから始まったのかを丁寧に確認することです。

この記事のポイント

  • 片側だけの痛みでも、股関節の病気が隠れていることがあります
  • 足の付け根、外側、お尻では、考えられる原因が異なります
  • 転倒後の強い痛みや、体重をかけられない場合は早めの受診が必要です
  • 治療は手術だけではなく、状態に応じて複数の選択肢があります

足の付け根が片側だけ痛むのは珍しいことではありません

股関節は、骨盤側のくぼみと、大腿骨の先端にある丸い骨頭が組み合わさってできています。

左右に一つずつありますが、関節の形、脚の長さ、筋力、可動域、過去のけがなどが完全に同じとは限りません。

例えば、片側の股関節が浅い、片脚に体重をかける癖がある、過去に片脚だけをけがした、といった違いがあると、一方の股関節に負担が集中することがあります。

したがって、右だけ、左だけという症状自体は珍しくありません。ただし、痛む側だけで原因を判断することはできません。

まず確認したいのは「痛む場所」です

脚の付け根・鼠径部が痛い

股関節そのものに問題がある場合、痛みは脚の付け根、いわゆる鼠径部に現れることが多くあります。

立ち上がるとき、歩き始め、階段、車の乗り降り、靴下を履く動作などで痛む場合は、股関節内の病気を確認する必要があります。

股関節の外側が痛い

ズボンのポケット付近や、横向きに寝たときに床へ当たる部分が痛む場合は、股関節そのものではなく、周囲の腱や滑液包などが痛みの原因になっていることがあります。

お尻や腰から痛みが広がる

腰やお尻から太ももへ痛みやしびれが広がる場合は、腰椎や神経の問題も考える必要があります。

患者さんが「股関節が痛い」と感じていても、実際には腰や仙腸関節など、別の場所が原因になっていることがあります。

片側の足の付け根が痛む主な7つの原因

1.変形性股関節症

変形性股関節症では、関節軟骨の変化や関節の変形によって、痛みや動かしにくさが現れます。

初期には、立ち上がりや歩き始めに、片側の足の付け根が痛むことがあります。

進行すると、歩いている間も痛い、長く立てない、靴下が履きにくい、夜間も痛む、といった症状がみられることがあります。

2.臼蓋形成不全と初期の股関節症

臼蓋形成不全とは、大腿骨頭を覆う骨盤側の屋根が浅い状態です。

若い頃にはほとんど症状がなくても、年齢や活動量の変化に伴って、一方の足の付け根に痛みが出ることがあります。

特に女性で、以前から股関節が硬い、あぐらがしにくい、長く歩くと片側だけ疲れる、という場合は、一度股関節の形を確認する意味があります。

3.FAIや関節唇の障害

FAIは、大腿骨と骨盤の形の組み合わせによって、股関節を深く曲げたり、ひねったりした際に骨同士がぶつかりやすくなる状態です。

深くしゃがむ、方向転換をする、ゴルフやダンスで体をひねる、といった動作で、鼠径部に鋭い痛みが出ることがあります。

関節の縁にある関節唇が傷つくと、引っかかり感、クリック音、股関節が抜けそうな感覚を伴う場合もあります。

4.腸腰筋や内転筋など、筋肉・腱の障害

スポーツ、急な運動、長時間のデスクワークなどにより、股関節の前側にある腸腰筋や、太ももの内側にある内転筋に負担がかかることがあります。

脚を持ち上げる、階段を上る、サッカーボールを蹴る、起き上がるといった動作で痛む場合は、筋肉や腱の評価も必要です。

5.股関節外側の腱や滑液包の障害

股関節の外側が痛む場合、臀部の腱や滑液包周囲に炎症や負担が生じていることがあります。

横向きで寝ると痛む、長く歩くと外側が痛む、階段で痛む、といった特徴があります。

この場合、脚の付け根が痛む股関節内の病気とは、治療方法が異なることがあります。

6.特発性大腿骨頭壊死症や股関節周辺の骨折

比較的急に片側の股関節痛が始まった場合は、大腿骨頭壊死症なども鑑別する必要があります。

また、転倒後に強い鼠径部痛があり、立てない、歩けない、脚に体重をかけられない場合は、股関節周辺の骨折も考えます。

このような場合は、様子を見続けず、早めに医療機関を受診してください。

7.腰、仙腸関節、鼠径部など、股関節以外の問題

腰椎の神経障害、仙腸関節の問題、鼠径部の疾患などによっても、足の付け根周辺に痛みを感じることがあります。

しびれ、脚の力の入りにくさ、腰痛、咳や力みで強くなる膨らみなどを伴う場合は、股関節以外の評価が必要になることがあります。

早めに受診してほしい症状

次のような症状がある場合は、自己判断で運動やストレッチを続けず、早めに医療機関へ相談してください。

  • 転倒や事故の後から強く痛む
  • 脚に体重をかけられない、歩けない
  • 痛みが急激に強くなった
  • 安静にしていても痛む、夜間も強く痛む
  • 発熱、腫れ、赤みを伴う
  • 脚のしびれや力の入りにくさがある
  • 数週間たっても改善しない
  • 痛みのために歩行距離が短くなっている

診察では何を調べるのでしょうか?

診察では、痛む場所を確認するだけではなく、歩き方、股関節の可動域、左右差、筋力、腰からの影響などを総合的に調べます。

レントゲンでは、関節の隙間、骨の形、臼蓋形成不全、関節の変形などを確認します。

レントゲンだけでは原因が分からない場合や、関節唇、大腿骨頭壊死、骨や軟部組織の詳しい評価が必要な場合は、MRIなどを検討します。

画像に変化があることと、痛みの強さは必ずしも一致しません。

画像だけを見るのではなく、患者さんがどの動作で困り、何ができなくなっているかを確認することが大切です。

治療は「手術をするか、何もしないか」の二択ではありません

股関節痛の治療には、日常生活での負担調整、薬物療法、運動器リハビリテーション、注射治療、再生医療、手術など、複数の選択肢があります。

どの治療が適切かは、病名だけではなく、進行度、痛みの強さ、年齢、仕事、生活目標、これまでに行った治療などによって異なります。

当院では、必要な手術まで無理に避けることは勧めていません。

一方で、手術以外の選択肢が残されている方に対して、最初から手術だけを答えにすることもありません。

保存療法やリハビリテーションに加え、適応がある場合には、PRP療法などの再生医療について説明することがあります。ただし、再生医療はすべての患者さんに適するものではなく、効果を保証する治療でもありません。

まず正確に診断し、メリットだけでなく、限界やリスクも理解したうえで選ぶことが重要です。

僕が、自分の家族だったらどうするか

もし僕の家族が、「片側だけだから、もう少し我慢する」と言っていたら、まず一度、原因を確認するように勧めます。

早く受診したからといって、すぐに手術になるわけではありません。

むしろ、早い段階で状態を把握することで、生活の工夫やリハビリなど、取り組める選択肢が見つかることがあります。

僕たちの目的は、患者さんを長くクリニックへ通わせることではありません。

痛みを減らし、旅行、仕事、ゴルフ、家族との外出など、その方が取り戻したい生活に近づき、最終的にはクリニックを卒業していただくことです。

右だけ、左だけという小さな違和感でも、遠慮する必要はありません。

一人で悩まず、「何が原因なのかを知りたい」という段階から相談してください。

股関節の痛みを、一人で抱え込んでいませんか?

必要な手術は適切に検討し、不必要な手術はできるだけ避ける。そのためには、まず痛みの原因と現在の状態を確認することが大切です。

「これくらいで受診してもよいのかな」と迷っている方も、ご相談ください。

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よくある質問

右側だけ痛む場合と、左側だけ痛む場合で病気は違いますか?

痛む側だけで病名を判断することはできません。痛む場所、動作、発症時期、可動域、画像所見などを総合して判断します。

足の付け根が痛い場合、必ず変形性股関節症ですか?

必ずしもそうではありません。筋肉や腱、FAI、関節唇、大腿骨頭壊死、腰からの関連痛など、複数の可能性があります。

痛みが軽ければ、しばらく様子を見てもよいですか?

短期間で改善する軽い痛みもあります。ただし、数週間続く、歩行距離が短くなった、夜間も痛む、可動域が狭くなった場合は、受診を検討してください。

受診すると、すぐに手術を勧められませんか?

診断されたからといって、すぐ手術になるとは限りません。保存療法、リハビリ、注射、再生医療、手術などから、医学的な適応と患者さんの希望を踏まえて検討します。

この記事の監修

阿部整形外科クリニック 院長 阿部瑞洋
整形外科医・股関節専門医

股関節の痛みについて、必要な手術は適切に提案しながら、不必要な手術を避け、保存療法・リハビリテーション・再生医療を含む選択肢を患者さんと一緒に考える診療を大切にしています。

※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断を行うものではありません。症状がある場合は医療機関で診察を受けてください。

参考資料

 

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