なぜ「転倒予防」に股関節が重要なのか?
日本の高齢者に多い「転倒と骨折」のリスク
厚生労働省の調査によると、高齢者が介護が必要となる原因の第1位は「転倒・骨折」。特に大腿骨頸部骨折は、股関節に近い部分の骨折であり、寝たきりや認知症悪化のリスクを高めます。
転倒の多くは「下半身の筋力低下」から始まる
加齢とともに筋力は年に1%ずつ低下するといわれています。特に下半身、なかでも股関節周囲の筋肉(中臀筋・大臀筋・腸腰筋)が弱ると、バランスが崩れやすくなり、転倒のリスクが急上昇します。
股関節は「姿勢・歩行・バランス」の司令塔
股関節は、体重を支える大きな関節であり、歩行や立ち上がり、階段昇降など日常生活の動作すべてに関わっています。ここが弱ると、下肢全体の動きが不安定になり、転倒の危険性が高まります。
股関節が弱ると、どんな危険があるのか?
柔軟性低下とバランス感覚の衰え
股関節の柔軟性が低下すると、歩幅が狭くなり、重心移動がスムーズにできなくなります。これがつまずきや転倒の原因になります。
「足の付け根の痛み」が転倒リスクを高める理由
股関節痛があると無意識にかばった歩き方になり、左右のバランスが崩れます。その結果、転倒しやすい姿勢になってしまうのです。
変形性股関節症と“隠れた前兆”に注意
初期の変形性股関節症は「軽い詰まり感」や「立ち上がり時の違和感」など、見逃されがちな症状から始まります。早めの受診と対応が重要です。
転倒を防ぐ3つの「股関節ケア」習慣
① 股関節ストレッチで可動域をキープ
毎日のストレッチで股関節の柔軟性を保つことが、転倒予防の第一歩です。
おすすめ簡単ストレッチ3選
- 椅子に座って片膝を抱えるストレッチ(腸腰筋を伸ばす)
- 立位で脚を後ろに引き、股関節を開くストレッチ
- 仰向けで両膝を胸に引き寄せるストレッチ(股関節全体の可動域アップ)
② 太ももとお尻の筋肉を鍛える簡単エクササイズ
筋力強化は、関節を守るクッションとなります。負担の少ない自重トレーニングがおすすめです。
自宅でできる簡単筋トレ
- サイドレッグレイズ(横向きで脚を上げる):中臀筋強化
- ヒップリフト(仰向けでお尻を持ち上げる):大臀筋活性化
- 軽めのスクワット(浅くしゃがむ):下肢全体の筋力維持
③ こまめな歩行と水分補給で全身の血流を保つ
一日中座りっぱなしは筋肉の萎縮や血流不足の原因です。1時間に1回は立ち上がり、軽く歩く習慣をつけましょう。水分補給も忘れずに。
「もう痛い…」と感じたら整形外科へ
こんな症状が出たら早めに受診を
- 足の付け根がズキズキ痛む
- 靴下を履く動作がつらい
- 片足立ちが不安定になってきた
検査でわかる股関節の状態
- レントゲン:骨の変形や関節の隙間をチェック
- MRI:関節唇や軟骨の損傷を詳細に確認
- 骨密度検査:骨粗鬆症リスクを評価
再生医療という選択肢も
初期の股関節トラブルには、PRP療法や幹細胞治療など、手術を避けた再生医療も有効な場合があります。体への負担が少なく、早期回復が期待できます。
まとめ|将来の寝たきりを防ぐには「股関節ケア」が第一歩
転倒=人生の転機。予防できる今が勝負!
高齢者の転倒は、骨折や要介護生活のきっかけになりやすいですが、股関節ケアを習慣化することで多くを予防できます。
「歩ける自分」を未来に残すために
- 毎日のストレッチ・筋トレを習慣にする
- 違和感があれば早めに専門医を受診する
- 再生医療などの新しい選択肢も視野に入れる
「転倒しない体づくり」は、今日から始められます。あなたの股関節を守ることが、未来の自分を守ることにつながります。
Q&A
Q:高齢者が転倒予防のために股関節を鍛えるメリットは?
股関節周囲の筋肉(中臀筋・大臀筋・腸腰筋)を鍛えることで、姿勢と歩行が安定し、転倒リスクを大幅に減らせます。
Q:股関節痛があるときに自宅でできるケア方法は?
痛みが軽い場合はストレッチや筋トレを無理のない範囲で行い、症状が続く場合は整形外科での診察がおすすめです。”
Q:手術以外で股関節トラブルに有効な治療法はありますか?
初期の股関節トラブルにはPRP療法や幹細胞治療など、再生医療という低侵襲の選択肢もあります。
股関節の痛みや転倒リスクが気になる方へ
阿部整形外科クリニックでは、股関節専門外来・再生医療相談を行っています。お気軽にご相談ください。
御相談はこちら https://abe-seikei-cli.com/
この記事の監修医師
阿部 瑞洋 医師(整形外科専門医/阿部整形外科クリニック 院長)
日本整形外科学会認定専門医。股関節疾患・スポーツ障害・再生医療を専門とし、地域に根ざした医療と先進治療の両立に取り組んでいる。特にPRP療法・幹細胞治療などの再生医療にも豊富な経験を持ち、患者一人ひとりに最適な治療を提供している。