「私は幹細胞培養上清液に向いていますか?」股関節治療を考える前に確認したい7項目

原因、症状
「先生、私は幹細胞培養上清液に向いていますか?」「変形性股関節症なら誰でも受けられますか?」「人工股関節を勧められていても試す意味はありますか?」

こんにちは。股関節専門医の阿部です。

この質問に対して、僕は診察前から「向いています」とは答えません。

理由は、股関節への幹細胞培養上清液について、効果が期待できる患者さんを明確に選別できる確立した適応基準がまだ存在しないからです。

だからこそ当院では、「受けられるか」より先に「受ける医学的な意味があるか」を考えます。

確認① 痛みの原因は本当に股関節の中ですか?

脚の付け根が痛いからといって、すべてが変形性股関節症とは限りません。

腰椎疾患、神経痛、股関節外側の腱障害、大腿骨頭壊死、骨折など、治療戦略が異なる病気があります。

股関節内への注射を考える前に、まず診断を確認します。

確認② 現在の変形・病期はどの程度ですか?

レントゲンなどで関節の状態を確認します。

変形が軽度だから必ず向いている、重度だから絶対に向いていない、という単純な線引きはできません。

ただし、高度な関節破壊と強い生活障害があり、人工股関節が合理的と考えられる場合には、エビデンスの限定された自由診療を繰り返すことが患者さんにとって最善とは限りません。

確認③ 保存療法をどこまで行いましたか?

変形性股関節症では、生活動作の調整、運動療法・リハビリ、薬物療法などが基本になります。

再生医療を考える前に、現在のリハビリ内容が適切か、運動量や日常生活の負担に改善できる部分がないかを確認します。

確認④ 日常生活にどの程度困っていますか?

治療の目的は、画像をきれいにすることではありません。

「30分歩くと痛む」「旅行を諦めている」「仕事の後半になると痛い」「夜に痛くて眠れない」など、生活への影響を具体的に確認します。

治療後に何を改善したいのかが明確になるほど、その治療に意味があったかも評価しやすくなります。

確認⑤ 手術の適応について説明を受けていますか?

再生医療を行っているクリニックだからといって、人工股関節を否定するべきではないと僕は考えています。

痛みや機能低下が生活の質へ大きく影響し、適切な非手術治療で十分な改善が得られない場合には、人工股関節を検討することがあります。

手術が必要な状態なのか。それとも、まだ非手術治療を検討できるのか。

ここを曖昧にしたまま再生医療へ進まないことが重要です。

確認⑥ エビデンスの限界を理解していますか?

幹細胞培養上清液・secretomeは、変形性関節症の基礎研究ではさまざまな可能性が報告されています。

しかし、人の股関節で「何%の患者さんに、何か月、どの程度効くか」を正確に説明できるだけの質の高いデータはまだありません。

軟骨再生や手術回避を保証する治療でもありません。

この不確実性を理解したうえで検討することが必要です。

確認⑦ あなたが取り戻したいものは何ですか?

最後に、僕が一番大切にしている質問です。

「股関節の痛みが減ったら、何をしたいですか?」

旅行、ゴルフ、仕事、家族との外出。

治療法は目的ではありません。

患者さんが取り戻したい生活を実現するための一つの手段です。

当院では股関節へ1回3mLを関節内注射します

当院では、以上の内容を確認し、適応を検討したうえで、股関節への幹細胞培養上清液は1回3mLを関節内注射する方針です。

ただし、3mLが科学的に確立された世界標準の最適量という意味ではありません。

また、最適な投与回数・投与間隔についても、股関節では十分確立していません。

「向いていない可能性」を考えた方がよいケース

例えば、感染や骨折など別の疾患が疑われる場合、大腿骨頭壊死など治療方針が異なる疾患、あるいは高度な関節破壊によって日常生活が著しく制限されている場合には、まず別の治療を優先すべき可能性があります。

また、「軟骨が完全に再生する」「絶対に手術を避けられる」という期待を前提に治療を希望される場合は、治療前に期待値を整理する必要があります。

もし家族だったら

自分の家族から「私は向いている?」と聞かれたら、僕は7項目を一緒に確認します。

そして、培養上清液よりPRPがよいと思えばそう説明します。リハビリを見直す方がよければそうします。手術の方が合理的なら、手術を勧めます。

治療を受けてもらうことではなく、その人に合う選択肢を見つけることが目的だからです。

「私は対象になりますか?」という方へ

診察・画像・これまでの治療・生活目標を確認し、PRP、幹細胞培養上清液、保存療法、必要なら手術まで含めて整理します。

治療を決めてから受診する必要はありません。

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電話:0422-30-8080

よくある質問

変形性股関節症なら誰でも対象ですか?

いいえ。確立した一律の適応基準はなく、診断、症状、画像、これまでの治療、手術適応などを確認して個別に判断します。

末期の変形性股関節症でも受けられますか?

治療可能かどうかと、治療を行う医学的な意味があるかは別です。高度な変形と強い生活障害がある場合には人工股関節がより合理的なことがあります。

軟骨が減っていても再生しますか?

現在、人の股関節で失われた軟骨を正常な状態へ再生すると証明された治療ではありません。

股関節には何mL使用しますか?

当院では1回3mLを関節内へ注射する方針です。

この記事の監修

阿部整形外科クリニック
院長 阿部 瑞洋

※本記事は一般的な医学情報です。治療適応や効果を保証するものではありません。

参考資料

  • 厚生労働省「幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)」
  • Suteja RC, et al. Clin Orthop Surg. 2025.
  • NICE. Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management.
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