PRPと幹細胞培養上清液、股関節痛にはどう違う?治療を選ぶ前に知りたい5つのポイント

再生医療
「PRPと幹細胞培養上清液、私にはどちらが合っていますか?」
「新しい培養上清液の方が、PRPより効くのでしょうか?」
「できれば手術以外の方法を試したいのですが、違いがよく分かりません」
こんにちは。股関節を専門に診療している整形外科医の阿部です。再生医療を調べている患者さんにとって、PRPと幹細胞培養上清液の違いは分かりにくいと思います。最初に結論をお伝えすると、現時点で「どちらが優れている」と一律に決められるだけの股関節の臨床データはありません。PRPには股関節症を対象とした複数の臨床研究があります。一方、幹細胞培養上清液・secretomeについては、変形性関節症に対する基礎研究や動物研究が中心で、人の股関節に対するデータはまだ限定的です。

ですから、「新しいから培養上清液」「自分の血液だからPRP」という選び方ではなく、現在の股関節の状態、これまでの治療、患者さんが取り戻したい生活から考えることが大切です。

違い① 原料が違います

PRPは、患者さんご自身の血液を採取し、遠心分離などによって血小板を多く含む成分を調製して使用します。

一方、幹細胞培養上清液は、幹細胞を培養した際に培養液中へ分泌された物質を含む「上清」を利用します。

つまり、PRPは自分の血液由来、培養上清液は培養された幹細胞が分泌した成分を含む液体という違いがあります。

また、幹細胞培養上清液は、幹細胞そのものを関節へ注入する治療ではありません。

違い② 含まれる成分と考え方が違います

PRPには血小板由来の成長因子などが含まれ、組織修復や炎症に関係する反応を利用することを目的とします。

培養上清液には、製造方法によってサイトカイン、成長因子、タンパク質、細胞外小胞など、幹細胞から分泌されたさまざまな成分が含まれる可能性があります。

ここで、「エクソソーム=培養上清液」と考えないことも重要です。エクソソームなどの細胞外小胞は、培養上清液中に含まれる可能性がある成分の一部です。

違い③ 股関節でのエビデンス量が違います

PRPについては、股関節の変形性関節症を対象としたランダム化比較試験やシステマティックレビューがあります。

ただし、研究結果は完全に一致しているわけではありません。痛みや機能の改善を報告した研究がある一方、2024年のプラセボ対照試験では、生理食塩水と比較して明確な優位性が示されなかった報告もあります。

つまり、PRPについても「必ず効く」と言えるわけではありません。

一方、幹細胞培養上清液・secretomeについては、変形性関節症を対象とした細胞・動物研究で、炎症反応や軟骨細胞などへの作用が研究されています。しかし、人の変形性股関節症に対する質の高い臨床研究はまだ十分ではありません。

この違いは、治療を選ぶときに必ず説明すべきポイントだと思います。

違い④ 当院での治療方法も異なります

PRPでは患者さんご自身から採血し、院内で製剤を調製して股関節内へ投与します。

一方、当院の幹細胞培養上清液は、適応を確認したうえで股関節内へ1回3mLを注射する方針です。

ただし、この3mLは世界共通の「最適量」として確立されたものではありません。当院で使用する製剤と治療プロトコルに基づく投与量です。

違い⑤ 「何を期待するか」を整理する必要があります

どちらの治療についても、「軟骨が完全に元通りになる」「人工股関節を必ず避けられる」と約束することはできません。

臨床で目指すのは、主に痛みや機能、日常生活への負担を改善できる可能性を探ることです。

そして治療の価値は、レントゲンだけでは決まりません。

例えば、

  • 旅行で長く歩けるようになりたい
  • 仕事を続けたい
  • ゴルフへ戻りたい
  • 夜間痛を減らしたい

といった患者さん自身の目標を確認します。

では、どちらが向いているのでしょうか?

診察をする前から、「あなたにはPRP」「あなたには培養上清液」と決めることはできません。

まず確認するのは、

  • 痛みの原因が本当に股関節内にあるか
  • 変形性股関節症の進行度
  • これまでの保存療法
  • 痛みや機能障害の程度
  • 手術適応の有無
  • 患者さんが何を取り戻したいか

です。

高度に関節が破壊され、生活への支障が非常に大きい場合には、再生医療を繰り返すより人工股関節の方が合理的なケースもあります。

逆に、手術を急ぐ状態ではなく、保存療法を行っても症状が残る場合に、再生医療について相談する意味があるケースもあります。

もし家族に聞かれたら、僕ならこう答えます

「PRPと培養上清液、どちらがいい?」

もし家族から聞かれたら、僕は治療名から答えません。

「まず今の股関節を見せて。そのあと一緒に考えよう」

と答えます。

治療を選ぶ前に診断をする。

メリットだけでなく限界も説明する。

必要な手術を再生医療だけで先延ばしにしない。

これが、僕たちが大切にしている考え方です。

PRPと培養上清液で迷っている方へ

大切なのは、「どちらが強い治療か」ではなく、今の自分の股関節にどの治療を検討する意味があるかです。

当院では、診察・画像・これまでの治療歴を確認し、リハビリ、PRP、幹細胞培養上清液、必要な場合には手術まで含めて治療方法を整理します。

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電話:0422-30-8080

よくある質問

PRPと幹細胞培養上清液ではどちらが効果がありますか?

股関節について両者を直接比較し、どちらが優れていると判断できる十分な臨床データはありません。

培養上清液の方が新しいのでPRPより優れていますか?

新しい治療であることと、有効性が高いことは同じではありません。現在のエビデンス量はPRPの方が多い一方、PRPもすべての患者さんに有効と確立しているわけではありません。

股関節への培養上清液は何mLですか?

当院では1回3mLを股関節内へ投与する方針です。世界共通の最適量という意味ではありません。

どちらも自由診療ですか?

当院で行うPRPおよび幹細胞培養上清液の治療は自由診療です。治療内容、費用、リスク、代替治療について説明を受けてから検討してください。

この記事の監修

阿部整形外科クリニック
院長 阿部 瑞洋

整形外科医・股関節専門医

※本記事は一般的な医学情報を提供するもので、個別の効果を保証するものではありません。幹細胞培養上清液の股関節に対する臨床データは現時点では限定的です。

参考資料

  • 厚生労働省「幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)」
  • Suteja RC, et al. Clin Orthop Surg. 2025.
  • Topaloglu M, et al. Effect of platelet-rich plasma injections versus placebo in hip osteoarthritis. 2024.
  • Almutairi AN, et al. Efficacy and Safety of PRP Intra-articular Injections in Hip Osteoarthritis. 2024.
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