股関節の外側が痛いのはなぜ?横向きで寝ると痛む人に多い原因を股関節専門医が解説!

原因、症状
「右を下にして寝ると、股関節の外側が痛くて目が覚めます」

「脚の付け根ではなく、ズボンのポケットあたりを押すと痛いんです」

「歩いているうちは何とか大丈夫なのですが、階段や片脚立ちになると痛みます」

診察室では、このようなご相談をよくいただきます。

股関節が痛いと聞くと、多くの方は最初に「変形性股関節症」を心配します。

しかし、股関節の外側が痛い場合、痛みの原因が股関節の中ではなく、股関節の外側にある筋肉や腱などにあるケースも少なくありません。

こんにちは。股関節を専門に診療している阿部整形外科クリニックの阿部です。

特に、

  • 横向きで寝ると痛い
  • 外側の骨を押すと痛い
  • 階段で痛い
  • 片脚で立つと痛い
  • 長く歩くと外側がズキズキする

という方では、「大転子部痛症候群」という病態を考えます。

今回は、股関節の外側が痛む原因と、「どうすれば改善できるのか」をお話しします。

この記事の結論

  • 股関節の外側痛では、中殿筋・小殿筋の腱などが原因になることがあります
  • 以前は「大転子滑液包炎」と呼ばれることも多くありましたが、現在は大転子部痛症候群として広く捉えます
  • 横向き寝、階段、片脚立ちで痛むのが特徴の一つです
  • 変形性股関節症や腰からの痛みとの鑑別が重要です
  • 治療の中心は負荷調整と適切なリハビリです
  • いきなり注射や再生医療から始めるのではなく、まず正しい診断が重要です

  1. 股関節の「外側」とは、どこでしょうか?
  2. 最も代表的なのが「大転子部痛症候群」です
  3. こんな症状があったら、大転子部痛症候群を考えます
    1. 1.横向きで寝ると痛い
    2. 2.股関節の外側を押すと痛い
    3. 3.階段・坂道がつらい
    4. 4.片脚立ちで痛い
    5. 5.長く歩くと、だんだん外側が痛くなる
    6. 6.脚を組むと痛い
  4. 40代〜60代の女性に多いのも特徴です
  5. 股関節の外側が痛くても、原因は外側とは限りません
    1. 変形性股関節症
    2. 腰から来る関連痛
    3. 中殿筋・小殿筋腱の損傷
  6. レントゲンで「異常なし」でも痛むことがあります
  7. 自宅で避けたい「3つのこと」
    1. 1.痛い側を下にして寝続ける
    2. 2.痛みを我慢して強くストレッチする
    3. 3.完全に休んでしまう
  8. 治療の中心は「負荷調整+リハビリ」です
  9. 注射治療は必要ですか?
  10. PRPなどの再生医療は選択肢になりますか?
  11. 手術が必要になることはありますか?
  12. 僕が自分の家族なら、まずこうします
  13. 股関節の外側の痛みで、夜眠れなくなっていませんか?
  14. よくある質問
    1. Q1.横向きで寝ると股関節が痛いのは、変形性股関節症ですか?
    2. Q2.「大転子滑液包炎」と「大転子部痛症候群」は違うのですか?
    3. Q3.痛い場所をマッサージしてもよいですか?
    4. Q4.横向きで寝るとき、どうすれば楽になりますか?
    5. Q5.外側の痛みにPRPは効きますか?
    6. Q6.どのくらい痛みが続いたら受診した方がよいですか?
  15. 参考資料

股関節の「外側」とは、どこでしょうか?

まず、場所を確認してみましょう。

脚の付け根、いわゆる鼠径部ではありません。

立った状態で太ももの外側を触っていくと、股関節の横に少し出っ張った硬い骨を触れる場所があります。

これを「大転子」と呼びます。

この大転子には、お尻の筋肉である中殿筋や小殿筋などの腱が付着しています。また、その周囲には摩擦を減らすための滑液包があります。

これらの組織に負担がかかることで、股関節外側に痛みが生じることがあります。

最も代表的なのが「大転子部痛症候群」です

股関節の外側痛でよくみられる病態に、大転子部痛症候群(Greater Trochanteric Pain Syndrome:GTPS)があります。

以前は「大転子滑液包炎」と呼ばれることが多くありました。

しかし現在では、滑液包だけの問題ではなく、特に中殿筋・小殿筋の腱障害などを含めて「大転子部痛症候群」と捉えることが一般的になっています。

つまり、

「滑液包が炎症を起こしているだけ」

という単純な病態ではありません。

股関節を支える筋肉と腱へ繰り返し負荷や圧迫が加わることで、症状が起きている場合があります。

こんな症状があったら、大転子部痛症候群を考えます

代表的なのは、次のような症状です。

1.横向きで寝ると痛い

非常に特徴的な症状の一つです。

痛い側を下にすると、大転子周囲の腱がベッドと骨の間で圧迫されます。

そのため、

「右を下にして寝られない」

「寝返りを打つと目が覚める」

という症状が出ることがあります。

中には痛い側を上にして寝ても、脚の位置によって反対側の腱に負担がかかり、痛みを感じる方もいます。

2.股関節の外側を押すと痛い

大転子付近を指で押した際に、いつもの痛みが再現されることがあります。

診察でも、痛みの場所を確認する重要な手掛かりになります。

ただし、押して痛いだけで病名が確定するわけではありません。

3.階段・坂道がつらい

階段や坂道では、お尻の筋肉が骨盤を安定させるために通常の歩行より強く働きます。

中殿筋・小殿筋の腱に問題がある場合、階段の上り下りや坂道で痛みが強くなることがあります。

4.片脚立ちで痛い

ズボンを履く、靴を履く、片脚で体を支える。

こうした動作では、股関節外側の筋肉と腱に大きな負荷がかかります。

「痛い側の脚だけで立つと外側が痛む」という症状も診断の重要な材料です。

5.長く歩くと、だんだん外側が痛くなる

歩き始めは問題なくても、20分、30分と歩いているうちに外側が痛くなる方がいます。

さらに痛みをかばって歩くことで、体を片側へ傾けるような歩き方になる場合もあります。

6.脚を組むと痛い

脚を組む、立った状態で片側へ体重を預けるなどの姿勢では、股関節が内側へ入り、大転子周囲の腱に圧迫が加わる場合があります。

痛みが強い時期には、このような姿勢を長時間続けないようにすることが大切です。

40代〜60代の女性に多いのも特徴です

大転子部痛症候群や殿筋腱障害は、男性より女性に多く、特に中年期から閉経前後の女性でよくみられることが知られています。

もちろん、男性や若いスポーツ選手にも起こります。

しかし、

「50歳になってから急に体が弱くなったから」

「年齢だから仕方がない」

と片付ける必要はありません。

痛みの原因を確認し、適切に負荷を調整することで改善を目指せる病態です。

股関節の外側が痛くても、原因は外側とは限りません

ここが、とても大切です。

痛い場所=悪い場所とは限りません。

変形性股関節症

変形性股関節症では、典型的には鼠径部、つまり脚の付け根に痛みを感じることが多いですが、外側やお尻、太もも周囲に痛みを感じることもあります。

靴下が履きにくい、股関節が動かしにくい、立ち上がりや歩き始めに脚の付け根も痛む、といった症状がある場合には股関節内の評価が必要です。

腰から来る関連痛

腰椎や神経の問題によって、お尻から股関節外側、太ももへ痛みを感じることがあります。

しびれや電気が走るような痛み、腰痛を伴う場合には、腰も一緒に評価します。

中殿筋・小殿筋腱の損傷

単なる一時的な腱への負担ではなく、腱の変性や部分的な損傷が起きている場合もあります。

明らかな筋力低下や長期間続く症状がある場合には、必要に応じて超音波やMRIなどの画像検査を検討します。

レントゲンで「異常なし」でも痛むことがあります

「レントゲンはきれいですよ、と言われたのに外側が痛い」

という患者さんもいます。

これは珍しいことではありません。

レントゲンは骨の形や関節症の評価には非常に有用ですが、中殿筋や小殿筋の腱など、軟部組織を詳しく評価する検査ではありません。

そのため、診察で腱障害などが疑われる場合には、超音波やMRIを追加することがあります。

一方で、画像検査だけで診断するわけでもありません。

画像上に腱の変化があっても症状がない方もいるため、

問診・診察・画像を組み合わせて判断することが大切です。

自宅で避けたい「3つのこと」

1.痛い側を下にして寝続ける

痛みが強い時期には、同じ場所へ何時間も圧迫を加え続けない方がよいでしょう。

仰向けで寝る、あるいは横向きの場合は脚の間に枕やクッションを入れて、股関節が内側へ入りすぎないようにすると楽になる場合があります。

2.痛みを我慢して強くストレッチする

「外側が張っているから伸ばそう」と、脚を強く内側へ入れるストレッチを繰り返す方がいます。

しかし、病態によっては、腱への圧迫が増えて症状を悪化させる場合があります。

痛みを我慢して伸ばせば早く治る、というわけではありません。

3.完全に休んでしまう

反対に、痛いからとほとんど動かなくなることも勧めません。

活動量が落ちることで股関節周囲の筋力が低下し、以前より歩くことがつらくなる可能性があります。

大切なのは「ゼロか100か」ではなく、症状を悪化させない範囲で負荷を調整することです。

治療の中心は「負荷調整+リハビリ」です

大転子部痛症候群や殿筋腱障害では、まず保存療法が中心になります。

具体的には、

  • 痛みを増やす姿勢や活動量の見直し
  • 必要に応じた薬物療法
  • 股関節外転筋群などの筋力改善
  • 骨盤や体幹のコントロール
  • 歩き方の調整
  • 段階的な運動負荷の増加

などを行います。

特に大切なのは、単に痛い場所をマッサージすることではありません。

中殿筋や小殿筋が、歩行や片脚立ちの際にどのように働いているのかを確認し、適切な負荷を少しずつ与えていきます。

殿筋腱障害を対象とした臨床研究では、腱への負荷管理についての教育と、段階的な運動療法を組み合わせた方法が有効であることが報告されています。

注射治療は必要ですか?

痛みが強く、リハビリを行うこと自体が難しい場合などには、病態に応じて注射治療を検討することがあります。

ただし、注射だけを行って、その後も同じ負荷のかけ方を続ければ、症状が再び出る可能性があります。

そのため、注射を行う場合でも、生活動作やリハビリを含めて治療を組み立てることが大切です。

PRPなどの再生医療は選択肢になりますか?

中殿筋・小殿筋などの腱障害が確認され、適切な保存療法を行っても症状が続く場合には、状態によってPRP療法などを選択肢として検討することがあります。

ただし、これも最初から全員に行う治療ではありません。

大転子部痛症候群に対するPRPについては、症状改善を報告した研究がある一方で、PRPの作製方法や注射部位、対象患者など研究ごとの差が大きく、効果についてはまだ十分に統一された結論が出ているわけではありません。

そのため、

「外側が痛いからPRP」ではなく、まずどの組織が原因なのかを確認することが大切です。

PRPは自由診療であり、効果には個人差があります。すべての方に適応となるわけではありません。

手術が必要になることはありますか?

大転子部痛症候群の多くは保存療法で治療します。

ただし、殿筋腱の大きな断裂があり、強い筋力低下や歩行障害が続いている場合など、病態によっては手術治療が検討されることがあります。

また、外側の痛みの原因が実際には進行した変形性股関節症であれば、股関節そのものへの手術が適切な場合もあります。

つまり、ここでも大切なのは「痛い場所」ではなく「診断」です。

僕が自分の家族なら、まずこうします

もし僕の家族が、

「夜、横向きで寝ると股関節が痛くて眠れない」

と言ったら、まず痛みの場所を確認します。

股関節の中の問題なのか。

大転子周囲の腱なのか。

腰から来ているのか。

そして原因を確認した上で、まず負担を減らし、適切なリハビリを行います。

注射が必要なら検討します。

保存療法で改善せず、医学的に適応があれば、再生医療などについてもメリットと限界を説明します。

必要な手術があるのであれば、それも避けません。

最初から治療方法を決めるのではなく、その人に何が必要なのかを順番に考える。

これは、僕が患者さんを診るときに常に大切にしていることです。

横向きで眠れないほどの痛みは、日中だけでなく、患者さんの睡眠や生活の質まで奪ってしまいます。

「年齢だから仕方ない」と一人で我慢する必要はありません。

股関節の外側の痛みで、夜眠れなくなっていませんか?

「横向きで寝られない」

「押すと外側が痛い」

「階段や長く歩くとつらい」

このような症状が続く場合は、一度原因を確認してみてください。

当院では、股関節だけでなく、腱・筋肉・腰なども含めて痛みの原因を評価し、保存療法、リハビリ、必要に応じた追加治療まで一緒に考えます。

「PRPを受けたい」という段階でなくても構いません。まず「なぜ痛いのか」を確認するためにご相談ください。

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よくある質問

Q1.横向きで寝ると股関節が痛いのは、変形性股関節症ですか?

必ずしもそうではありません。外側を押して痛い、階段や片脚立ちで痛む場合は、大転子部痛症候群や中殿筋・小殿筋の腱障害などが原因となることがあります。一方、変形性股関節症でも外側に痛みを感じることがあるため、診察で判断します。

Q2.「大転子滑液包炎」と「大転子部痛症候群」は違うのですか?

以前は股関節外側痛を大転子滑液包炎と呼ぶことが多くありましたが、現在は滑液包だけでなく、殿筋腱など複数の組織が関係する病態として大転子部痛症候群という言葉が使われています。

Q3.痛い場所をマッサージしてもよいですか?

強く押したり、痛みを我慢して繰り返しマッサージすることはお勧めしません。大転子周囲の腱が敏感になっている場合、圧迫によって症状が強くなる可能性があります。

Q4.横向きで寝るとき、どうすれば楽になりますか?

痛い側を下にしない、仰向けを試す、横向きの場合は脚の間に枕やクッションを入れるなど、圧迫を減らす工夫で楽になる場合があります。

Q5.外側の痛みにPRPは効きますか?

殿筋腱障害などで保存療法を行っても症状が続く場合にPRP療法を検討することがあります。ただし研究結果にはばらつきがあり、すべての方に効果があるとは限りません。まず診断と適応判断が必要です。

Q6.どのくらい痛みが続いたら受診した方がよいですか?

一律に期間だけで判断することはできません。夜眠れない、歩行や階段に支障がある、症状が悪化している、しびれや発熱を伴うなどの場合は、早めに医療機関へ相談してください。

この記事の監修

阿部整形外科クリニック
院長 阿部 瑞洋

整形外科医・股関節専門医

股関節の診断、保存療法、運動器リハビリテーション、再生医療などに取り組んでいます。「自分や家族ならどうするか」という視点を大切にし、必要な手術は適切に提案しながら、手術以外の選択肢がある患者さんには複数の方法を提示し、一緒に治療方針を考える診療を大切にしています。

※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断や治療効果を保証するものではありません。症状が強い場合や、発熱、急な歩行困難、しびれ・脱力などを伴う場合は医療機関を受診してください。

参考資料

  • Royal National Orthopaedic Hospital:A Patient’s Guide to Gluteal Tendinopathy
  • Cambridge University Hospitals:Gluteal Tendinopathy
  • Mellor R, et al. Education plus exercise versus corticosteroid injection versus wait and see for gluteal tendinopathy. BMJ. 2018.
  • Kinsella R, et al. Diagnostic Accuracy of Clinical Tests for Greater Trochanteric Pain Syndrome. J Orthop Sports Phys Ther. 2024.
  • 日本整形外科学会「変形性股関節症」
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