股関節の手術で迷ったらセカンドオピニオンへ――何を持って、何を聞けばいい?股関節専門医が解説

治療
「人工股関節を勧められました。でも、まだ決心がつきません」「本当に今が手術のタイミングなのでしょうか?」「ほかの先生にも一度診てもらいたいのですが、主治医に失礼でしょうか?」

股関節外来では、このようなご相談をいただくことがあります。

こんにちは。股関節を専門に診療している整形外科医の阿部です。

まず、結論からお伝えします。

股関節の手術で迷っているなら、セカンドオピニオンを利用することは選択肢の一つです。

ただし、セカンドオピニオンの目的は、

「手術をしなくていいと言ってくれる医師を探すこと」

ではありません。

反対に、

「手術を受けるよう説得してもらうこと」

でもありません。

今の自分の股関節の状態を理解し、治療の選択肢を整理して、自分自身が納得して決断するための“第2の意見”を聞くこと。

これがセカンドオピニオンの本来の役割です。

この記事のポイント

  • セカンドオピニオンは、主治医とは別の専門医の意見を聞く方法です
  • 正式なセカンドオピニオン外来では、紹介状や画像データが必要になることがあります
  • レントゲン・MRIは、できれば画像そのものを準備します
  • 「手術するか」だけではなく「今手術する理由」を聞きます
  • 手術以外の選択肢が残っているかも確認します
  • 最後は、患者さん自身が何を取り戻したいかから治療を決めます

  1. そもそも「セカンドオピニオン」とは?
  2. セカンドオピニオンを考えてよいのは、こんなときです
  3. セカンドオピニオンには何を持っていけばいい?
    1. 1.診療情報提供書(紹介状)
    2. 2.レントゲン・MRI・CTなどの画像データ
    3. 3.血液検査などの検査結果
    4. 4.現在使用している薬が分かるもの
    5. 5.「聞きたいこと」を書いたメモ
  4. 股関節の専門医に聞きたい「5つの質問」
    1. 質問1.「私は、なぜ今手術を勧められているのでしょうか?」
    2. 質問2.「今、手術をしない場合はどうなりますか?」
    3. 質問3.「手術以外の選択肢は、まだ残っていますか?」
    4. 質問4.「PRPなどの再生医療は、私に意味がありますか?」
    5. 質問5.「この治療で、私は何ができるようになりますか?」
  5. 「手術をしないと言ってくれる先生」を探さないでください
  6. セカンドオピニオンを受けたら、主治医に戻ってもう一度相談してもよい
  7. セカンドオピニオンを受ける前の準備
  8. もし僕の家族が、手術を勧められて迷っていたら
  9. 「手術を勧められた。でも、まだ納得できていない」という方へ
  10. よくある質問
    1. Q1.セカンドオピニオンには紹介状が必要ですか?
    2. Q2.レントゲンやMRIは持って行った方がよいですか?
    3. Q3.セカンドオピニオンを受けたら、主治医を変えなければいけませんか?
    4. Q4.セカンドオピニオンでPRPについて相談してもよいですか?
    5. Q5.手術を勧められたあと、何件くらい病院を回ればよいですか?
    6. Q6.人工股関節を勧められていますが、もう少し待っても大丈夫ですか?
  11. 参考資料

そもそも「セカンドオピニオン」とは?

セカンドオピニオンとは、現在診療を受けている主治医とは別の医師に、診断や治療方針について意見を聞くことです。

ここで知っておいてほしいのは、正式な「セカンドオピニオン外来」と「別の病院を通常受診すること」は同じではないという点です。

医療機関によって運用は異なりますが、正式なセカンドオピニオン外来は、現在の主治医から提供された診療情報や画像データをもとに「意見」を聞くことを目的としており、その場で新たな検査や治療を行わない形が一般的です。

また、自由診療として設定されている医療機関もあります。

一方、新しい医療機関を通常受診する場合には、必要に応じて改めて診察や検査を行い、その医療機関で治療を受けることを前提とする場合があります。

どちらを希望するのかを、予約前に確認しておくとスムーズです。

セカンドオピニオンを考えてよいのは、こんなときです

例えば、次のような場合です。

  • 人工股関節を勧められたが、まだ決断できない
  • 「なぜ今手術なのか」をもう少し理解したい
  • 手術以外の選択肢が残っているか確認したい
  • 骨切り術など、自分の関節を残す手術が可能か知りたい
  • PRPなどの再生医療を検討する医学的な意味があるか知りたい
  • 診断や痛みの原因について、別の専門医の見方も聞きたい

「迷っている」ということは、単に優柔不断なのではありません。

説明を聞いても、自分の中でまだ整理できていない情報がある、ということです。

それを整理するために、第2の意見を聞くことには意味があります。

セカンドオピニオンには何を持っていけばいい?

正式なセカンドオピニオンでは、医療機関ごとに必要書類が決められています。

一般的には、次のような資料が重要です。

1.診療情報提供書(紹介状)

現在の診断、これまでの治療、主治医の治療方針などがまとめられています。

セカンドオピニオンを依頼する際には、まず現在の主治医に相談してみてください。

2.レントゲン・MRI・CTなどの画像データ

股関節の治療判断では、画像はとても重要です。

できれば、印刷された写真だけでなく、CD-ROMなどに保存された画像データそのものを準備すると、より詳しく確認できます。

人工股関節を勧められた経緯を見るためには、現在の画像だけでなく、過去の画像があれば経時的な変化を比較できる場合もあります。

3.血液検査などの検査結果

必要な検査は病気によって異なりますが、これまで行った検査結果があれば持参してください。

4.現在使用している薬が分かるもの

お薬手帳や薬の一覧があると便利です。

特に、鎮痛薬、抗凝固薬、ステロイドなどを使用している場合は、治療判断に関係することがあります。

5.「聞きたいこと」を書いたメモ

僕は、これをかなり重要だと思っています。

診察室へ入ると緊張してしまい、聞こうと思っていたことを忘れてしまう方は少なくありません。

3〜5個程度に絞って、紙やスマートフォンに書いておきましょう。

股関節の専門医に聞きたい「5つの質問」

質問1.「私は、なぜ今手術を勧められているのでしょうか?」

一番大切な質問です。

単に、

「レントゲンが悪いから」

だけではなく、

  • 痛みの強さ
  • 歩行能力
  • 夜間痛
  • 可動域
  • 仕事や家事への影響
  • 保存療法への反応
  • 関節の変形

などのうち、何が手術を勧める大きな理由なのかを確認します。

変形性股関節症では、画像だけでなく、痛みや機能障害が生活の質にどの程度影響しているかが重要です。

質問2.「今、手術をしない場合はどうなりますか?」

手術のメリットとリスクだけを聞いて終わらず、待つ場合についても確認してください。

例えば、

  • 半年程度待つことは可能か
  • 変形が進む可能性はどの程度あるか
  • 筋力や歩行能力にどのような影響が考えられるか
  • 待つことで手術自体が難しくなる可能性はあるか

などです。

「手術するか、しないか」だけでなく、「いつするか」も大切な治療判断です。

質問3.「手術以外の選択肢は、まだ残っていますか?」

現在の病期によっては、リハビリテーション、薬物療法、生活動作の調整などを続ける選択肢があります。

一方、保存療法を十分に行っても生活障害が強く、関節の変形が進んでいる場合には、人工股関節が最も合理的な選択になることもあります。

大切なのは、

「手術以外の方法が存在するか」ではなく、「自分にまだ医学的な意味があるか」

を聞くことです。

質問4.「PRPなどの再生医療は、私に意味がありますか?」

当院ではPRP療法などの再生医療を行っていますので、患者さんからこの質問をよくいただきます。

PRPは股関節症の一部の患者さんで検討することがありますが、人工股関節手術を必ず避けられる治療ではありません。

高度に関節変形が進んでいる場合や、生活への支障が非常に大きい場合には、PRPより手術が適切なこともあります。

逆に、病期や症状によっては、手術以外の選択肢を整理する意味がある場合もあります。

「私はPRPに向いていますか?」股関節再生医療を考える前の7項目はこちら

質問5.「この治療で、私は何ができるようになりますか?」

治療法そのものよりも大切な質問です。

例えば、

「旅行で1日1万歩歩けるようになりたい」

「仕事をあと5年続けたい」

「夜、痛みなく眠りたい」

「ゴルフへ復帰したい」

治療後に取り戻したい生活を具体的に伝えてください。

同じレントゲンでも、患者さんの目標によって治療の優先順位は変わります。

「手術をしないと言ってくれる先生」を探さないでください

これは少し厳しく聞こえるかもしれませんが、とても大切です。

セカンドオピニオンを何件も受けて、

「まだ手術をしなくていい」

と言ってくれる医師だけを探すことは、必ずしも患者さんの利益にはなりません。

逆に、一人の医師に手術を勧められたからといって、十分に理解できないまま決断する必要もありません。

大切なのは、複数の意見を集めることではなく、

なぜ治療方針が違うのかを理解することです。

ある医師は人工股関節を勧める。

別の医師は、もう少し保存療法を続けられると言う。

その場合は、

「何を根拠に判断が違うのか」

を確認してください。

セカンドオピニオンを受けたら、主治医に戻ってもう一度相談してもよい

もちろん構いません。

正式なセカンドオピニオンは、主治医を変えるためだけの仕組みではありません。

別の専門医の意見を聞いたうえで、

「やはり今の主治医のもとで手術を受けよう」

と決める方もいます。

反対に、別の治療方針に納得し、転院を検討する方もいます。

重要なのは、誰の意見に従うかではありません。

患者さん自身が、自分の状態と選択肢を理解して決めることです。

セカンドオピニオンを受ける前の準備

相談時間を有効に使うために、次のことを整理しておくとよいでしょう。

  • いつから痛いのか
  • 現在どのくらい歩けるのか
  • 夜間痛があるか
  • これまでどんな治療をしたか
  • どの治療で何が変わったか
  • 現在の主治医から何と説明されているか
  • 自分は何を一番不安に感じているか
  • 痛みが改善したら何をしたいか

特に最後の項目は重要です。

「手術したくない」という希望だけではなく、

「なぜ手術を避けたいのか」「その代わりに何を守りたいのか」

を考えてみてください。

もし僕の家族が、手術を勧められて迷っていたら

もし僕の家族が、

「人工股関節を勧められた。でも怖くて決められない」

と言ったら、僕はこう伝えます。

「手術を断るためではなく、納得して決めるために、もう一人の専門医の話を聞いてみよう」

そのうえで、

今の痛みの原因は何なのか。

本当に今が手術のタイミングなのか。

手術を待つ場合には何が起こり得るのか。

リハビリや再生医療に、まだ医学的な意味があるのか。

を確認します。

そして、人工股関節がその人の生活を取り戻す最善の方法なら、僕は手術を勧めます。

まだ別の選択肢が合理的なら、それも説明します。

必要な手術は適切に。不必要な手術はできるだけ避ける。

そのために、患者さん自身が十分な情報を持って決断できることが大切です。

「手術を勧められた。でも、まだ納得できていない」という方へ

「本当に今、人工股関節が必要?」

「手術以外の選択肢はまだある?」

「PRPは自分にも意味がある?」

「もう一人の股関節専門医の意見も聞いてみたい」

そんな段階から、治療方針を整理することには意味があります。

※正式な「セカンドオピニオン外来」と通常の診察では、必要書類・費用・検査の可否などが異なります。受診先へ事前にご確認ください。

当院への通常診療としての股関節相談をご希望の場合は、これまでの画像データや診療情報があれば、できるだけご持参ください。

股関節専門外来をWEB予約する

治療方針について問い合わせる

電話:0422-30-8080

よくある質問

Q1.セカンドオピニオンには紹介状が必要ですか?

正式なセカンドオピニオン外来では、紹介状を必須としている医療機関が多くあります。通常診療として別の医療機関を受診する場合は運用が異なるため、事前に受診先へ確認してください。

Q2.レントゲンやMRIは持って行った方がよいですか?

はい。股関節手術の判断では画像情報が重要です。可能であればレントゲンやMRI、CTなどの画像データと、検査結果をご準備ください。

Q3.セカンドオピニオンを受けたら、主治医を変えなければいけませんか?

いいえ。別の専門医の意見を聞いたうえで、現在の主治医のもとで治療を続けることもできます。

Q4.セカンドオピニオンでPRPについて相談してもよいですか?

相談すること自体は可能ですが、PRPが人工股関節の代替になるとは限りません。病期、症状、画像、保存療法の経過などを確認したうえで、医学的に検討する意味があるか判断します。

Q5.手術を勧められたあと、何件くらい病院を回ればよいですか?

件数に決まりはありません。ただし、多くの意見を集めること自体が目的になると判断が難しくなることがあります。治療方針が異なる場合は、その根拠を理解することが重要です。

Q6.人工股関節を勧められていますが、もう少し待っても大丈夫ですか?

一律には答えられません。痛み、機能、変形の程度、これまでの治療、生活への影響などによって異なります。「待つ場合のメリットとデメリット」を専門医へ確認してください。

この記事の監修

阿部整形外科クリニック
院長 阿部 瑞洋

整形外科医・股関節専門医

股関節の診断、保存療法、運動器リハビリテーション、再生医療などに取り組んでいます。「自分や家族ならどうするか」という視点を大切にし、必要な手術は適切に提案しながら、手術以外の選択肢がある患者さんには複数の方法を提示し、納得できる治療方針を一緒に考えることを大切にしています。

※本記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断・治療を行うものではありません。正式なセカンドオピニオン外来の利用方法、費用、必要資料などは医療機関ごとに異なります。

参考資料

  • 東京大学医学部附属病院「セカンドオピニオン」
  • 順天堂大学医学部附属順天堂医院「セカンドオピニオン外来」
  • 日本整形外科学会「変形性股関節症」
  • NICE「Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management」

この記事を執筆した人

阿部 瑞洋 医師

  • 整形外科専門医
  • 股関節専門医

一般社団法人エンジョイワーク 阿部整形外科クリニック 院長。
股関節・膝関節の保存療法および再生医療に精通し、年間延べ3万人以上の患者様の診療実績を持つ。最新の医療と親身なカウンセリングで、地域医療に貢献している。

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