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「手」とは、一般的に手首から指先までの部分を意味します。
手の骨は、「指」部分の基節骨・中節骨・末節骨の3つ(親指は2つ)の骨と、「手のひら」部分の中手骨、手根骨(大菱形骨・小菱形骨・舟状骨・月状骨・有頭骨・有鉤骨・豆状骨・三角骨)から構成されます。
また、「手首」とは、前腕と手のひらが繋がっている部分のことで、「手関節(しゅかんせつ)」とも呼ばれ、手のひらの手根骨と前腕部の橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃっこつ)の2本の骨から構成されます。
さらに、手を自由に動かすことを可能にしているのが、骨の継ぎ目にある「関節」や骨同士をつなぐ「靱帯」、筋肉が骨に結合する部分の「腱」、腱を押さえる「腱鞘(けんしょう)」です。
それぞれが正常に機能しているからこそ、手で「触る(感覚)」「つまむ」「握る」「押す」「叩く」「引く」「ねじる」「回す」など、手を使うすべての動作が不自由なく行え、何気ない日常生活が送れているのです。
(図)手の骨と関節
当院では、手首や手の痛みに対して、問診・視診・触診のほか、超音波検査(エコー)による画像検査で診断しています。
超音波検査は、レントゲン検査では見つけられないような筋肉やじん帯・腱などの微細な損傷を見極めることが可能であり、患者さんも一緒に病変部位を見ながら確認できます。さらに、検査は痛み無く受けられ、被爆の心配もありません。
超音波検査(エコー)は細かいところを観察することが出来るうえに、炎症がある部分を
特定することが出来ます。そのため、関節リウマチなどの炎症性疾患を診断することもできます。
なお、必要に応じて、X線検査(レントゲン)、MRI検査、CT検査なども行います。
手首や手に痛み・腫れがある、指にしびれが見られる、手を動かしづらいなど異常を感じる場合には、お早めに当院までご相談ください。
橈骨遠位端骨折(コレス骨折・スミス骨折)
橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)は、手首から肘(前腕)にある2本の骨のうち、親指側の太い骨「橈骨(とうこつ)」が手首側(遠位端)で骨折することです。
子どもの場合には、橈骨の手首側にある成長軟骨板*1を骨折することを意味します(その場合、骨端線損傷と言います)。
*1成長軟骨板:骨の発育の役割を持つ、成長期の子どもに見られる特有の軟骨。大人になると消失する。
また、手先に近い方の骨のかけら(骨片)が手の甲側にずれたものを「コレス骨折」、手のひら側にずれたものを「スミス骨折」と呼びます。
(画像引用)橈骨遠位端骨折|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/distal_radius_fracture.html
橈骨遠位端骨折が起こると、すぐに手首周囲の腫れと強い痛みが現れます。手に力が入らず、ブラブラして、反対の手で支えなければならないこともあります。さらに、折れた骨・腫れによって、神経が圧迫され、手の指にしびれがみられたり、水平に置いたフォークを横から見たように変形したりすることがあります。
骨折の原因で多いのが、手のひらを突いて転んだり、自転車・バイクに乗っているときに転んだりすることです。ただし、閉経後の女性の場合には、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)により、骨が脆くなっているケースもみられるため、些細な転倒でも簡単に折れてしまいます。橈骨遠位端骨折は椎体圧迫骨折、上腕骨近位部骨折、大腿骨近位部骨折をと共に骨折を起こしやすい部位の一つです。
受傷状況の問診・視診、超音波検査やレントゲン検査(X線検査)など画像診断により、骨折の状況を確認します。
基本的な治療の流れは、整復(医師が手で折れた骨のずれを元に戻す)、固定する、リハビリテーションとなります。
最初に、麻酔をして痛みを取ってから、手を引っ張り、ずれた骨片をもとの位置に戻す整復処置を行います。その後、ギプスやギプスシーネ*2固定をします。
*2ギプスシーネ固定:シーネとは添え木のことで、関節の内側・外側などどちらかだけを固定する方法
しかし、整復をしてずれを戻しても、骨が安定せず再びずれてしまうときや整復できないような骨折のときには、外科的手術が必要となることもあります。
なお、子どもの場合は、整復が不完全でも自己矯正力が高いので、固定処置で自然に元の位置に戻っていくことも多いですが、大きくずれたときには手術が必要となります。
※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。
手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)
手根管症候群は、手の親指から薬指(中指側の半分)にしびれ・痛みが現れ、特に妊娠・出産期や更年期の女性に多くみられる病気です。
手首(手関節)の付け根には、手首の骨とじん帯に囲まれた「手根管」と呼ばれるトンネルのような空間があり、その中には9本の腱と1本の神経(正中神経:せいちゅうしんけい)が走っています。
(画像引用)手根管症候群|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/carpal_tunnel_syndrome.html
手根管症候群の原因は、手根管の中を通る「正中神経」が圧迫されることです。
圧迫が起こる理由ははっきりしていませんが、主な要因として、女性ホルモンのバランスの変化による浮腫み(むくみ)があります。そのほか、骨折などの外傷、手の使い過ぎ、透析による合併症(アミロイド沈着)、腫瘍・腫瘤なども要因となります。
手のしびれは中指から始まり、最終的に親指から薬指の半分(親指側)の3本半にしびれが現れます。
また、しびれや痛みは、朝方や自転車・車の運転、編み物など手を使う動作で強くなる一方で、手を振る・指の曲げ伸ばしを行うと、楽になる特徴があります。ひどくなると、親指側の付け根(親指側の手のひらで膨らんでいるところ)が痩せてきて、指の感覚が鈍くなるため、小さなものを掴みづらくなる、物を落としやすくなる、親指と人差し指をくっ付けてOKサインを作ることも難しくなります。
(画像引用)日本整形外科学会
手根管症候群は、特徴的な手のしびれから、ある程度診断可能ですが、誘発テストも行います。誘発テストの種類には、「打腱器で手首を叩いて指先にしびれが出るかどうか(ティネル徴候)」「胸の前で手の甲と甲を合わせると、しびれが強まるか(ファーレン徴候)」などがあります。さらに補助検査として、微弱な電気を流し神経の流れを確認する「神経伝導速度検査」や超音波検査なども行い、神経の圧迫・むくみ具合を確認して診断します。
一番の治療法は患部を安静にすることなので、できるだけ手を使わないようにしましょう。その上で、消炎鎮痛剤の服用や湿布薬、コルセット装着、手根管内のステロイド注射など保存療法を優先して行います。重症化し、しびれ・痛みが強い、細かいものがつまめないなど生活に支障を来している場合には、外科的手術を検討することもあります。手術は局所麻酔をかけ、約30分で終わります。
※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。
舟状骨骨折(しゅうじょうこつこっせつ)
舟状骨骨折は、上下4つずつ計8つある手根骨の中でも、手首に近い親指側にあり、船底のように湾曲した形の「舟状骨」が骨折することです。
(図)舟状骨
骨折の主な原因は手を突いて転ぶことですが、サッカーのゴールキーパーとしてボールをパンチングすることでも受傷します。
舟状骨骨折では、親指側の手首の腫れと圧痛(押すと痛むこと)がみられます。
骨のズレが小さい場合、痛みや腫れが弱く、急性期を過ぎると一旦痛みが落ち着くこともあり、治療せず放置してしまうケースもみられます。
しかし、放置すると「偽関節*3」になりやすく、手首の関節の変形が起こり、再び痛みや力の低下、可動域の減少などがみられるようになります。特に手首に近いところでの骨折は、虚血性壊死(きょけつせいえし)を起こす可能性もあるので、注意が必要です。
*3偽関節:骨折した骨が付かずに、関節のように動くこと
なお、舟状骨骨折の初期は、通常のレントゲン検査で発見しにくいことがあるため、超音波検査などでしっかり患部を確認して、診断します。
治療には、ギプス固定による保存治療と、特殊なネジで固定する非侵襲的手術があります。
近年は、ギプス固定よりも手術の方が日常生活の制限を最小限にできることから、骨折のずれの大きさや患者さんの年齢層に関わらず、手術が積極的に行われています。固定後は筋力強化や可動域リハビリテーションも併せて行い、4~5か月程度でスポーツ復帰を果たすことも期待できます。
ドケルバン病
ドケルバン病は、手を広げたり手首を動かしたりすると、手首の親指側に痛みや腫れが現れる病気で、「狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)」とも呼ばれます。
手首の親指側にあるトンネルのような腱鞘(けんしょう)と、その中を通る、親指と手首を繋いでいる2本の腱(短母指伸筋腱・長母指外転筋腱)が炎症を起こした状態です。
(図)ドケルバン病の病態
ドケルバン病の主な原因は、手(特に親指)の使い過ぎや女性ホルモンの変化です。
ドケルバン病は、出産・授乳期(特に初産の女性に多く、赤ちゃんを抱っこするようになることにより起こるようです。)や更年期の女性に多いほか、ゴルフやテニスなどスポーツをする方やピアニスト・料理人・美容師、パソコンのキーボードをよく打つ方など、手を酷使する方にも多くみられる病気です。
さらに、近年はスマートフォンを片手で操作する場合も同様に発症しやすいことから、「スマホ腱鞘炎」というあだ名も付いています。
ドケルバン病の診断では、親指側の手首の痛み・腫れなどの症状を確認します。
また、親指を引っ張り、一緒に手首を小指側に曲げると痛みが強くなるか(フィンケルシュタインテスト変法)などの誘発テストを行います。
自己診断として、手首を直角に曲げて、親指と人差し指を開いて、痛みが強くなるかどうか(岩原・野末のサイン)により、確認する方法もあります。
(図)ドケルバン病の誘発テスト
治療の基本は、手の安静です。軽症の場合、一緒に湿布などの消炎鎮痛剤を使用することで、痛みや腫れなどの症状を改善することが期待できますが、改善がみられないときには、腱鞘内へのステロイド注射を行います。手に力が入らないなどの重症化、繰り返す再発には、腱鞘の鞘を開く手術を検討します。
※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。
ガングリオン
ガングリオンとは、比較的若い女性に多くみられる病気で、ゼリー状の物質がこぶのように膨らむ良性腫瘤(しゅりゅう)です。
ガングリオンの多くは無症状ですが、神経のそばに発生した場合には、神経を圧迫するため、しびれ・痛み・運動障害(動かしにくい)が現れることがあります。
なお、ガングリオンの柔らかさや大きさには、個人差があります。
ガングリオンができやすい部位は、手の甲側の手首(手関節背側)、手のひら側で親指近くの手首や指の付け根の腱鞘部分ですが、足首や膝など関節・腱があるところに発生することもあります。
(画像引用)ガングリオン|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/ganglion.html
ガングリオンの発生原因は、今のところ不明です。しかし、ガングリオンのゼリー状の内容物が関節液や腱と腱鞘の潤滑液(滑液)であることから、関節を包む「関節包」、腱を包む「腱鞘」の変性が要因にあると考えられています。そのため、手を使い過ぎることが必ず発症に繋がるということではありません。
(画像引用)日本整形外科学会
触診と超音波検査などで腫瘤を確認して、注射針でゼリー状の内容物を吸引できれば、ガングリオンと診断します。手関節の痛みが続いても、外から触れられない奥の方に発生すること(オカルトガングリオン)もあるため、超音波検査などで確認する場合もあります。
ガングリオンは、特に症状がなければ、そのまま経過観察をしていても問題ありません。
とはいえ、他の病気と鑑別するためにも整形外科で、一度診察を受けると安心です。
特にガングリオンが大きくなる、痛みがある、しびれ・動かしづらいなどの症状がみられる場合には、治療が必要です。
ガングリオンの治療では、注射器による内容物の吸引・排出を行います。押しつぶす治療法もありますが、感染症を起こす危険性があるので、ご自分で圧迫などはせず、必ず整形外科の専門医の治療を受けましょう。保存的治療を行っても、再発を繰り返すときには、ガングリオンの摘出手術を検討することがあります。
※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。
ばね指
ばね指とは、手指の腱鞘炎です。
指を曲げる屈筋腱(くっきんけん)と腱を押さえるトンネルのような靱帯性腱鞘が炎症を起こした状態(腱鞘炎)であり、進行することにより、指の曲げ伸ばしがスムーズにできず、引っ掛かって伸ばせない、伸ばそうとすると急に指が伸びる「ばね現象」が現れます。
(画像引用)ばね指|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/snapping_finger.html
主な症状は指の付け根の腫れ・痛み・熱っぽさ(熱感)で、特に中指、薬指、親指に多くみられます。症状は寝ている朝方に強く感じ、日中は手を使うことで症状が軽減することも少なくありません。
ばね指の原因は、「女性ホルモンの変化」と「手(指)の使い過ぎ」であり、妊娠中・授乳中や更年期の女性、スポーツをしている方や主婦(夫)に多くみられます。さらに、関節リウマチや糖尿病、人工透析を行っている方にも発症しやすく、これらの持病のある方は複数の指で発症するケース(多発性)や、再発するケースもあります。
ばね指は、指の付け根の圧痛や腫れ、ばね現象など触診・視診にて診断します。他の病気と鑑別するために、超音波検査も行います。
ばね指の治療は、痛みの出ている部分の安静(固定することも)、腱や腱鞘のストレッチ、ステロイド注射など保存的治療を行い、症状の改善を図ります。患部を冷やしたり、温めたりすることも痛みやこわばりに効果的です。
保存的治療を行っても、症状が改善しない、何度も再発するときには、引っ掛かりのある腱鞘の鞘を開く手術を行うこともあります。なお、腱鞘切開術は、1cm程度の小さな切開であり、所要時間も15分程度で済むため、日帰りで行うことが可能です。
母指CM関節症
母指CM関節とは、親指の付け根と手首にある小さな関節のことであり、物をつまむ、手を開く・閉じる・回す・ねじるなど、手を使う動作になくてはならない重要な関節です。
母指CM関節症は「変形性関節症」のひとつであり、親指のCM関節が炎症を起こすことで、痛みと腫れが起こる病気です。更年期前後(40代~70代)の女性に多くみられます。
初期では、瓶のふたを開けるなど親指に力を入れる動作で、だるい痛みやピリッとした痛みが現れるだけですが、進行すると、CM関節がずれていくため(亜脱臼)、腫れて親指が開きにくくなります。また、関節の変形によって、親指の指先の関節が曲がり、付け根の関節が反る「白鳥の首変形(スワンネック変形)」がみられることもあります。
(画像引用)母指CM関節症|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rhizarthrosis.html
母指CM関節症の原因には、加齢、負荷の蓄積、女性ホルモンの変化などがあります。
親指のCM関節は、他の指よりも使用頻度が高い上、更年期以降の女性では、老化や女性ホルモンの影響により、関節軟骨の炎症を起こしやすいのです。
診断では、親指のCM関節に痛みや圧痛、ねじると強い痛みが現れるなどの自覚症状、視診・触診から判断します。なお、同じような症状が現れる、手首の親指側の腱鞘炎(ドケルバン病)や関節リウマチと鑑別するために、超音波検査やレントゲン検査を行う場合があります。
母指CM関節症の治療の基本は、投薬・テーピング等の装具療法(局所の安静)・温熱療法などの保存的治療です。できるだけ手を使わないよう安静にすることが一番の薬であり、軽症であれば湿布を貼って包帯で固定しているだけでも改善が期待できます。
痛みや腫れが強く、日常生活に支障を来す場合には、ステロイド注射を行います。ステロイド剤は少量ですが、短期間で何度も打つと軟骨の損傷など合併症の恐れがあります。
ただし、痛みが強く白鳥の首変形など関節の変形が起こっている時は、切除関節形成術や関節固定術などの外科的手術を行うことがあります。
※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。
ヘバーデン結節
ヘバーデン結節は、「変形性関節症」のひとつで、主に人差し指から小指の第一関節(DIP関節)の手の甲側に2つの結節(こぶ)ができ、腫れや痛みが現れる病気です。イギリスのへバーデン医師によって発見されました。なお、指の変形の程度には個人差があり、まれに親指が変形することもあります。
初期症状は、第一関節だけ赤く腫れる、水ぶくれのような膨らみ(ミューカスシスト:粘液嚢腫)、じんじんとした違和感や痛みが現れます。進行すると、痛みで手を強く握ることが難しくなります。
ヘバーデン結節の発症は原因不明とされていますが、発症する方の多くは40歳以上の中高年の女性であり、家事・仕事で手をよく使う方ということから、「女性ホルモンの影響」や「手を使い過ぎること」が要因として、考えられています。
診断では、第一関節だけに現れる特徴的な指の変形や腫れ・痛みなどの自覚症状の確認、視診・触診に加えて、似たような症状の関節リウマチなどと鑑別するために超音波検査やレントゲン検査を行います。検査で関節の隙間が狭い・骨棘(こつきょく:骨のとげ)がみられた場合に診断されます。
(画像引用)ヘバーデン結節|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/heberden_nodes.html
ヘバーデン結節の治療は、サポーターやテーピングなどで患部の安静を第一に行います。薬物療法、温熱療法など保存的治療を基本とし、痛みや腫れなどが強い場合には、ステロイド注射を行います。保存的治療を行っても症状が改善せず、変形により日常生活に支障を来すときには、結節切除や関節を固定する外科的手術を行うことがあります。
※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。
マレット変形(槌指)
マレット変形は、指の第一関節が曲がったままとなり、痛みや腫れがみられる病気です。曲がった指は伸ばそうと思っても伸ばせませんが、もう片方の手で伸ばせば伸びます。また、曲がったままの指が木槌のような形に見えることから、「槌指(つちゆび)」とも呼ばれます。
マレット変形の原因には、指を伸ばす伸筋腱が切れる場合(腱性マレットフィンガー)と、第一関節内の伸筋腱が付着している骨の骨折の場合(骨性マレットフィンガー)の2つのタイプがあり、いずれもボールが指にあたるなどの「突き指」によって発生します。
(画像引用)マレット変形のタイプ|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/mallet_finger.html
マレット変形は、自覚症状や指の形状から診断可能ですが、腱性か骨性かによって治療法が異なるため、超音波検査やレントゲン検査で変形原因を詳しく調べることが大切です。
腱が切れたことが原因であれば、装具や添え木で固定するなど保存的治療を行います。
一方、骨折が原因であれば、手術を検討することもあります。最近では、切開せずに皮膚の上からワイヤーを刺して、正しい位置を保つ方法もあります。
※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。
デュピュイトラン拘縮(こうしゅく)
デュピュイトラン拘縮とは、手のひらから指(主に薬指・小指)にかけて、数珠状のこぶ・しこりのようなものができ、徐々に皮膚が引きつれていき、指が伸ばしにくくなる病気です。50歳以上の男性や糖尿病患者さんに多くみられます。
(画像引用)デュピュイトラン拘縮|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/dupuytrens_contracture.html
痛みなどの症状はありませんが、引きつれが進行すると、指を伸ばしにくくなるので、拍手がしづらい、顔を洗うときに指が当たる、手袋をはめられないなど、日常生活に支障を来します。
指が伸ばしにくくなりますが、指を曲げる屈筋腱には異常はみられません。また、こぶのようなものは、手のひらの下にある「手掌腱膜(しゅしょうけんまく)」と呼ばれる膜が肥厚して収縮することにより発生しますが、発生原因は分かっていません。
数珠状のこぶや変形などの症状から診断可能ですが、腱の断裂や他の疾患との鑑別のために、超音波検査などを行うこともあります。
今のところ、こぶ・しこりに効果的な治療薬やリハビリテーションなど、有効な保存的治療はありません。ただし、第二関節が曲がるなど、指の変形によって日常生活に支障を来たす場合には治療が必要であり、皮膚の引きつれを取る「腱膜切除手術」を検討します。近年は切らずに注射で治す新しい治療法も行われています。いずれも術後は、指を伸ばすリハビリテーションを行う必要があります。
※必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介します。
院長からひとこと
手首や手、手指は細かい作業をすることが多く、字を書いたり、ボタンをはめたりといった運動から、身振り手振りというように感情を表したり、コミュニケーションの手助けをしたり、手をつなぐ、握手をするというような行為まで、様々な機能を持っている部分です。
手首や手、手指は痛みが出たり、腫れたり、感染を起こしたりしてあまり動かさないでいると、すぐに動きが悪くなってしまい、細かい作業がしにくくなります。
病態によっては動かさない時期は「固定などによってなるべく動かさない」もしくは「痛みの範囲内で動かす」、その後は積極的に動かしていく必要があります。
整形外科医は病気や病態、経過や治癒期間によって適切な治療、リハビリテーションを行い、なるべく機能障害や痛みを残さないようなお手伝いをしていきます。
手首や手、手指に腫れや痛みがある、動きにくい、動かすと痛い、心配や不安がある場合には早めに受診、ご相談下さい。