院長の診察に対する想い
こんにちは、阿部整形外科のクリニックの阿部瑞洋です。
今回は、私がなぜ患者様とのコミュニケーションを大事にし、問診や診察に時間をかけているかという点についてお話をさせて頂きたいと思います。
そのために患者様にはお待たせしてしまうことも多々あるとは思うのですが、実は私には家族に関しての苦い後悔があり、同じ後悔を二度としたくないのです。
当院の特徴として患者様にもご評価い頂いている笑顔、明るいといった雰囲気も患者様とコミュニケーションを取りやすくするのに役立っていると思います。
私の祖父母は祖父が大工、祖母は主婦で畑仕事や米作りをしていました。二人とも初孫であった私をとても可愛がってくれ、常に私の味方をしてくれました。両親に怒られた時などはよく祖父母の部屋に行き、慰めてもらったものです。
やがて成長した私は大学に進学するために上京し、実家を離れることとなりました。旅立つ日、誰よりも泣いていたのは祖母でした。東京へのあこがれに浮足立っていた私は、“大丈夫だから!行ってくるよ!”と言い、元気に駅に向かって歩き出しました。
その後、医学部を卒業し東京で整形外科医になった私は、毎日が忙しく、また慌ただしく過ごしていました。次第に実家に電話をすることも、帰ることも少なくなっていきました。
そんなある日、実家から連絡が入りました。
“ばあちゃんが倒れた!”
診断はクモ膜下出血でした。88歳であった祖母は、福島の病院では手術が出来ず、点滴をしているだけとのことでした。急いで帰省し対面した祖母は、何も話せず、意識もなく、ただただベッドに横たわっていました。
その姿を見て愕然としました。
“なぜ、こんなことになってしまったのか”と。
聞けば頭痛がすると二、三か月前から言っていたらしく、元々高血圧を持病として持っていた祖母は脳出血のリスクがあり、さらに頭痛が続いていれば脳出血を疑うことは予想できることでした。
なぜ実家にもっと連絡しなかったのだろう、なぜもっと声を聴かなかったのだろう。今は祖母の声を聴くことはできません。
そして間もなく祖母は帰らぬ人となってしまいました。
祖父は祖母と二人で両親と同じ敷地内の別棟の家に住んでいました。ずっと一緒でした。
突然、長年連れ添った祖母に先立たれた祖父の心情はどんなものだったのでしょうか?
東京に戻った私はまた忙しい日常に戻り、次第にまた実家への連絡が途絶えるようになりました。
一人になった祖父は日頃話す相手もいなくなり、あっという間に認知症となってしまい、そして認知症はすぐに進行して行きました。
元々体が丈夫だった祖父はやがて徘徊するようになり、母からは、
“とても大変だし、心配だ!”
と連絡が入るようになりました。
母のその心配は的中します。
徘徊中に転倒し、大腿骨を骨折したのです。両親から治療について相談を受けた私は、手術を勧めました。私の勤めていた病院では九十代でも手術をしていましたし、祖母が手術を受けられなかったという思いもありました。
仕事を抜けられず東京にいた私に、手術が無事に終了したという連絡が入りました。
やはり手術をしてもらって良かったと思ったのもつかの間、今度は術後肺炎になったという連絡を受けました。
元々体が丈夫だった祖父の事だから大丈夫だろうと思っていました。しかし、肺炎はどんどん悪化していき、私が病院に駆けつけた時には酸素マスクを付け、ほとんど話すこともできませんでした。そして、数日後祖父も帰らぬ人となってしまいました。
結局、あんなに私が医師になったと喜んでくれた大事な二人の家族を同じ目に遭わせてしまいました。
もっと、コミュニケーションを取っていれば、きちんと会っていれば、など後悔ばかりでした。
患者様一人一人の状態は違います、それは家族であろうと同じです。もっときちんと会って話をしていれば、少しでも体に触れて診察をしていれば、もしかしたら救えたかも知れない、救えなかったかも知れません。それは今となっては決して分かりません。
しかし、どんなに後悔しても二人はもう戻っては来ません。
病院では多くの患者様の診察をし、検査をし、診断をし、手術をし、患者様にもその御家族にも感謝して頂きました。
しかし、コミュニケーションや診察、管理などのちょっとした時間や手間を惜しめば、患者様のちょっとした変化に気付かず、それが病気の発見の遅れや誤診、見逃し、病状の悪化など患者様の様々な不利益につながってしまうかもしれません。
だから、私は患者様とコミュニケーションをしっかりと取り、診察を行い、また経過を診させて頂く事に全力を尽くします。もう同じ後悔はしたくありません。
患者様一人一人に十分な時間を掛けることによって、患者様の健康や人生を守り、当院の提供する患者様への健康、安心、体力作りを通して、患者様一人一人がいつまでも自分のしたいことを決して諦めない人生を送るお手伝いをしたいと思っております。
そして、それこそが当クリニックの地域の皆様への貢献、責任であると感じています。
患者様の人生や日々の生活に想いを寄せ、その不安や御希望に本気で向きあい、患者様の笑顔を拝見し、また感謝の言葉をかけていただいた時、私は自分の医師としての本当の役割に気付き、そしてこの仕事に携わることのできる幸せ、自分に関わって頂ける方々に幸せや元気を届ける事の喜びを実感出来ることと思います。
そのために当クリニック全員が持てるもの全てを、覚悟と真剣さを持ってお届けする所存でおります。